踊らされない〜「自省録」を読みました。(2)

マルクス・アウレーリウス 神谷美恵子 訳 岩波文庫 テレビや様々なマスメディアで、食欲や性欲の刺激をもくろんでると思われる映像やら話やらを聞かない日はないだろう。 「ほら、おいしそうな焼き肉ですね〜」(+焼き肉の焼ける時のおいしそうな音) →おい…

まずはご紹介〜「自省録」について (1)

マルクス・アウレーリウス 神谷美恵子 訳 岩波文庫 著者の名前を見て、共産主義となんか関係ある? と思ったアナタ向けのご紹介である。 答えは、全く関係なし! これを中学生のとき読んでいたら、「(虫)が読んでる本マルクスってかいてあった〜赤〜?」と…

本物とは何か〜「画商の罠」を読みました。

アーロン・エルキンズ 秋津知子 訳 ハヤカワ文庫 「今、私の手元にレンブラント(の絵)があるのだが、これをあげましょう」 こんな事言われて、断る正気の学芸員がいるだろうか。レンブラント!バロックを専門とする学芸員には、垂涎の品である。 一応確認…

探偵達への都市の影響〜「フェルモア先生、墓を掘る」を読みました。(ちょっとネタばれ気味)

ロビン・ハサウェイ 坂口玲子(訳) ハヤカワ文庫 確かチャーチルの言葉だったと思うが「人は環境をつくる、しかるのちに、環境が人をつくる」といった意味の言葉があった。住まいや部屋といった狭い意味にもとれるが、広く、住んでいる街にも影響をうけてい…

お笑い分類学〜「馬鹿★テキサス」を読みました。

ベン・レーダー 東野さやか 訳 早川書房 本の題名に「馬鹿」ってまずくないか? と、まず思った。これって差別用語じゃないのか? ののしり言葉であることは確かだし・・・ それに ★。 正直言うとこの★にひかれて、手にとって見た。文字ばかりが並ぶ本の背表…

自分狩り〜「暗殺者」(下)を読みました。

ロバート・ラドラム 山本光伸 訳 新潮文庫 ボーンが殺し屋カインらしい・・・ 下巻の冒頭で、合衆国政府情報部中枢(ホワイトハウスやら何やら)が出てきて恐るべきことを語る。 カルロス同様有名な、殺し屋カインなるものは存在しない。 カルロスをあぶりだ…

記憶喪失のスパイ〜「暗殺者(上)」を読みました。

ロバート・ラドラム 山本光伸 訳 新潮文庫 今回もう一度読んだきっかけは、映画「ボーン・アイデンティティ」をテレビの再放送で見た事である。 この映画の原作はこの作品である。少なくとも設定は同じである。 テレビで見て、そういや昔、原作を読んだな〜…

風の吹く街〜「ウィンディ・ストリート」を読みました。

サラ・パレツキー 山本やよい 訳 早川書房 アメリカはイリノイ州のシカゴは、「風の街」というのがキャッチ・コピーである。古くは、クレイグ・ライスがこの街を舞台に、ジャスタス夫妻とマローン弁護士のシリーズを書いた。アメリカのミステリを語る上で、…

教師の仕事〜「ルアン先生はへこたれない」を読みました。

ルアン・ジョンソン 酒井洋子 訳 ハヤカワ文庫 教師の仕事は細々(こまごま)とした知識を生徒に詰め込むことではない。 生徒を愛することである。「学校に来ている子に悪い子はいない」と自分に言い聞かせ(本当に悪い子は学校に来ないから)、次から次へと…

バナナんバナナんバ〜ナ〜ナ♪〜「バナナ学入門」を読みました。

中村武久 丸善ライブラリー 果物のなかでも、バナナの腹持ちのよさは飛びぬけていると思う。 最近、朝食をバナナにする朝バナナダイエットなるものがあるが、これも、その腹持ちの良さに注目したものだろう。 本書は、バナナなど、熱帯性の植物に関心を持つ…

日記の日記〜「面白すぎる日記たち  逆説的日本語読本」を読みました。

鴨下信一 文藝春秋 これも、日記であるが、日本人ぐらい、日記の好きな人達はいないようだ。学校でも夏休みの日記なる宿題がたいていあったと思う。 なにしろ、戦時中、軍隊で日記を書くことが奨励されていたぐらいである。おかげでアメリカ軍は、戦死した日…

末ながく幸せに!〜「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を読みました。(3)

P・L・トラヴァース 林容吉 訳 岩波少年文庫 日本の年末年始でも、除夜の鐘がなり、108つの煩悩を払う。 除夜の鐘は、TVで見ている限り、12月31日の夜の12時ぴったりに鳴り始めるようだ・・・と思ってネットで調べてみたら、107つを旧年中に最…

空飛ぶペパミントキャンディ・ステッキ〜「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を読みました。(2)

P・L・トラヴァース 林容吉 訳 岩波少年文庫「大理石の少年」 公園にある大理石の彫刻の少年が降りてきて、ある日の午後だけ、マイケルとジェーンと遊ぶというもの。 彫刻だとすっぱだかでも誰も何も言わないのに、生きている少年となると、「風邪ひかない…

知識を持つことと知ること〜「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を読みました。(1)

P・L・トラヴァース 林容吉 訳 岩波少年文庫 メアリー・ポピンズシリーズ。 これは三作目のようだ。 イギリスには、子どもの面倒を見てくれるナニー(乳母)という職業がある。子育てというのは誰にでも大変な仕事だから、ありがたい助っ人である。TV番…

京都の人とつきあう前に知っておきたいこと〜「京都スタイル」を読みました。

甘里君香 新潮文庫 まず、知っておきたいのは、コレである。相手の家の玄関で話していて、「ほな、ぶぶづけでも」と誘われた時。絶対に、絶対に、「いいですね〜、いただきます」なんて言ってあがっていってはイケナイ。陰で、子々孫々までボロクソに言われ…

テレアポ殺人〜「おかけになった犯行は」を読みました。

エレイン・ヴィエッツ 中村有希 訳 創元推理文庫 このヘレン・ホーソーンのシリーズは、毎回ヘレンが、転職し、そこで殺人に巻き込まれるという筋立てのようである。このシリーズを読んだのは、この本が初めてだが。 転職といっても、テレアポなど、かなり崖…

リアル・パイレーツ〜「海賊の掟」を読みました。

山田吉彦 新潮新書 映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のシリーズや、スティーブンソンの「宝島」などから、海賊のイメージはつくられてきたと思う。 とりわけ印象的なのは、宝島のジョン・シルバーである。左足がつけねからなく、松葉杖を器用にあやつる…

階級と殺人〜「気どった死体」を読みました。

サイモン・ブレット 嵯峨澄江 訳 ハヤカワポケミス ミセス・パージェター・シリーズの第一弾である。以降のミセス・パージェターシリーズでパターンとなるのが、ミセス・パージェターが、郊外の住宅地や、パック旅行など、中産階級の人々の集まるところにい…

アイルランド人論〜「とびきり可笑しなアイルランド百科」を読みました。

テリー・イーグルトン(著) 小林章夫(訳) 筑摩書房 アイルランド人、もしくはアイルランド系というとどういったイメージをお持ちだろうか。 きわめておおざっぱに言えば、当然ながら白人で、赤毛、もしくは黒髪が多く、身体が大きい人が多い。酒飲みで、…

北朝鮮への関心をもとう〜「ある北朝鮮兵士の告白」を読みました。

韓景旭(かん けいきょく) 新潮新書 北朝鮮情勢が、緊迫している。 核実験を行ったり、ミサイルを何発も飛ばしたり・・・。 人間に例えると、自暴自棄になって、人質をとり、立てこもりをする犯人のようだ。以前の日記で紹介した、アベンジャー型の犯人のよ…

進取の気性〜「王女マメーリア」を読みました。(2)

ロアルド・ダール 田口俊樹 訳 ハヤカワ文庫 この本の順番とちょっと前後するが、先に「王女マメーリア」について、書いておく。 表題作である。 だいたい、短編集の中の表題作というのは中でも、とりわけ出来が良く、特に印象深い作品であることが多い。少…

色々な仕事があるものだ〜「王女マメーリア」を読みました。(1)

ロアルド・ダール 田口俊樹 訳 ハヤカワ文庫 ロアルド・ダールの短編集である。 子ども向けの本の「チャーリーとチョコレート工場」が、以前ジョニー・デップを迎えて映画化されたが、その原作者である。子供向けの作品ばかりでなく、大人向けのものも書いて…

得るために与える〜「あなたがあたえる 大富豪ビンダーの夢をかなえる5つの秘密」を読みました。

ボブ・バーグ+ジョン・デイヴィッド・マン 木村博江 訳 文芸春秋 営業・・・つまり、セールスの人というとどんなイメージをお持ちだろうか。 虫の独断と偏見でいうと、派手なスーツやアクセサリーを身につけ、女性だとメイクも濃く、欲望(とりわけ金銭欲)…

宇宙人と自分〜「なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか」を読みました。

スーザン・A・クランシー 林 雅代 (訳) 早川書房 かなり前のことだが・・・。 「宇宙人ていると思う?」 と友人に聞かれて、即座に、絶対的な自信を持って答えた。 「いる!」 「えー!絶対?絶対いる?」なんか嬉しそう。 「うん。絶対いる。」 「なんで…

光が濃いと闇も濃い〜「一瞬の光」を読みました。(2)

アーロン・エルキンズ 秋津知子訳 ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫 イタリアでのこと。ある女性が、食事のため、自分の小型車をレストランの前に駐車して、食事を食べていた。レストランの中から、ガラス張りの壁ごしに、彼女はとんでもないものを見てし…

アメリカ人から見たイタリアの魅力〜「一瞬の光」を読みました。(1)

アーロン・エルキンズ 秋津知子訳 ミステリアス・プレス ハヤカワ文庫 先日、TVで「ダヴィンチ・コード」を見たが、ごらんになっただろうか。 これは本の感想で映画の感想ではないので、詳細は控えるが、最初に見た時は全くのお笑い種(ぐさ)だと思ったが…

プロローグ〜「カエルも愛せば王子になれる」を読みました。〜その8

スティーヴン・ミッチェル(著) 安藤由紀子(訳) アーティストハウス ちょっと話を飛ばす。 よく、ビジネスのハウツーで、「仕事に燃え上がるような情熱を抱く」とか言う。 そりゃ〜持ちたいけど、持てないからこの本読んでるんでしょ。と心の中でツッコミ…

試練と変身〜「カエルも愛せば王子になれる」を読みました。〜その7

スティーヴン・ミッチェル(著) 安藤由紀子(訳) アーティストハウス ま〜、続きといっても、大方の予想通り。 前回お姫様が、かべにむかって、上野投手よろしく(ただし野球のフォームで)カエルを投げつけた。 その後は、グリムの原作通りである。 壁に…

お姫様の寝室で(2)〜「カエルも愛せば王子になれる」を読みました。〜その6

スティーヴン・ミッチェル(著) 安藤由紀子(訳) アーティストハウス 普通なら、寝室での描写がこれほど詳しいのはマレである。たいてい、最初のキスあたりでフェイドアウトし、安っぽいポルノ小説になることを避ける。 子ども向けのグリム童話ならなおさ…

お姫様の寝室で〜カエルも愛せば王子になれる」を読みました。〜その5

スティーヴン・ミッチェル(著) 安藤由紀子(訳) アーティストハウス さて・・・・ さて、お姫様の寝室で、二人(正確には1人と一匹)はベッドの上にすわっていた。 横並びに座っていて、二人ともみじめな気持ちだった。 二人とも・・・? 「あなたはわた…