まずはご紹介〜「自省録」について (1)
著者の名前を見て、共産主義となんか関係ある?
と思ったアナタ向けのご紹介である。
答えは、全く関係なし!
これを中学生のとき読んでいたら、「(虫)が読んでる本マルクスってかいてあった〜赤〜?」と触れ回るバカがクラスメイトにいたものだから、つい・・・。トラウマになってしまった。ま、中学生だからしかたない。
「無知な者および道理をわきまえない者への忍耐」の重要性は本書でも、何回も出てくることだし。
共産主義の生みの親はカール・マルクス。カールが名前で、マルクスが名字。1818年生まれのユダヤ系ドイツ人の経済学者である。
この著者の名前はマルクス・アウレーリウス・アントニウス。
マルクスは名前であり、英語でいうとマークのようなもの。アントニウスが名字だろう。
カール・マルクスよりはるか昔の121年(百二十一年ですよ)に生まれたローマ人である。そう、ローマは今は、イタリアの首都の名前だが、このころは全ヨーロッパと西アジアを領土とする、ローマ帝国があった時代である。
しかも、ただのローマ人ではない。ローマ皇帝なのだ。しかも、ただの皇帝ではない。なんとストア派の哲学者としても有名というめったにいないタイプである。
「ストイックな」という言葉をご存知の方も多いと思う。禁欲主義的な、厳しいといった意味に使われる。英語でいうstoicであり、ストア学派のという意味である。
これは、「快楽主義的な」の反対語であり、快楽主義哲学はエピクロスが創始したものである。但し、快楽を追うというのは、贅沢をするとか、性に開放的になるという意味ではなく、この「快楽主義」というのも現在使われている意味とは全く異なる。
とはいえ、ローマ皇帝ともなれば、贅沢などの追求はいくらでもできる。(以前のネロ帝を見れば明らかである)
そこを、ストイックにこらえて(さすがはストア派である)、奥さん(もちろん1人である)とこどもたちのいる家庭を守り、宮廷の華美に染まらずに自らを律することは、なみなみならぬ困難があったと想像できる。
それらの誘惑に耐え、部下たちに暴君にならないように接するための覚書という感じである。
理論的な古代ギリシャ人に比べると、実際的なローマ人ということもあり、明日からの日々の生活に役立ちそうなことばかりで、当時のローマばかりではなく、現代の日本にも通用することが非常に多い。ってか、人間って変わらない・・・。ちょっと言葉を代えれば(なかにはかえなくても)十分言えることばかりである。それどころか、新しささえ感じる。
この本を読むに、現代の虫と人種も時代も立場もこんなに異なるマルクス・アウレーリウスなのに、親近感、共感を覚えるのは、考えて見ると本当にすごいことだと思う。
もしかしたら、本というのは、タイムマシンに一番近いものなのではないか。