末ながく幸せに!〜「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を読みました。(3)

            P・L・トラヴァース  林容吉 訳      岩波少年文庫

 日本の年末年始でも、除夜の鐘がなり、108つの煩悩を払う。

 除夜の鐘は、TVで見ている限り、12月31日の夜の12時ぴったりに鳴り始めるようだ・・・と思ってネットで調べてみたら、107つを旧年中に最後の一つを新年につくらしい・・・いや〜「行く年来る年」でしか見た事ないので、知らなかった!

 この鐘で煩悩払わないと、新しい年が清らかに始まらない。

 だから日本でも、除夜の鐘が鳴っている間は、古い年と新しい年のすきまのような気がする。

 さて、メアリー・ポピンズの国、イギリスでも、あの、ビッグベンの鐘が鳴り始めると旧年が終わり、鳴り終ると新年が始まるという。今日は大みそかである。

 それを聞いたマイケルは、重大な問題に気付く。

「じゃあそのすきまは?鳴っている間はどうなるの?」

 実にスルドイ指摘である。

「面倒が面倒を起こすまで、面倒の面倒を見ないで下さい!」というのが、メアリー・ポピンズの答え。意味不明である。しかも言いにくい。

 その夜、なぜか、メアリー・ポピンズは子供達のぬいぐるみをとりあげて暖炉の上に並べておく。子供達が愛読している本をそれぞれのぬいぐるみの前に置き、まるでぬいぐるみが本を読んでいるようだ。

 ビッグベンの鐘が鳴るまでおきていようと、ジェーンとマイケルは頑張るが、やはり寝てしまう。

 そして、ビッグベンの鐘が鳴り始める。

カーン。

 すると、子供達のぬいぐるみが動き出す。
 ジェーンのぬいぐるみ、ゾウのアルフレッドがマイケルの金色のブタに話しかける。
「よかった。すきまにはいれたな。」
「すきまって、なんのすきま?」横からマイケルが聞く。
年の終わりと年の始まりのすきまである。

ぬいぐるみたち、そして本のなかの登場人物(人でないのも含む)は、広場に出て踊る。
すきまでは、日頃仲が悪いもの、例えば、三匹の子豚とオオカミも仲良くなる。

みんな楽しく、輪になって踊る。公園の芝生で。

ジェーンはロビンソン・クルーソーに会い、マイケルはハンプティ・ダンプティと話す。

みんな、みんな、幸せに、末永く幸せであるように祈りあう。

しかし、それも、ビッグベンの鐘が鳴り終わるまで。


 翌朝目覚めた二人は夢じゃないかと思うが、ぬいぐるみの足さきが濡れている。まるで夜露に濡れる公園の芝生で踊ったかのようだ。