プロローグ〜「カエルも愛せば王子になれる」を読みました。〜その8

           スティーヴン・ミッチェル(著)   安藤由紀子(訳)  アーティストハウス  

 ちょっと話を飛ばす。

 よく、ビジネスのハウツーで、「仕事に燃え上がるような情熱を抱く」とか言う。

 そりゃ〜持ちたいけど、持てないからこの本読んでるんでしょ。と心の中でツッコミを入れたことが多かった。

 仕事にせよ何にせよ、情熱を抱いてすれば、そりゃできる。と思う。

 どうやって情熱を持つか。それはやっぱり、動機付けが重要だと思う。何のためにそれをするかである。

 もし、男性なら、やはり、性衝動と関連付けるのがベストだと思う。ま、わざわざ書かなくとも、皆さんそうしておられると思うが。「坊ちゃん」や「寅さん」シリーズの『マドンナ』、西洋騎士道に出てくる『貴婦人』・・・考えてみれば、ほとんどの文学作品がこの元型をなぞっている。ちょっと前の「電車男」もこの系統だと思う。そのはるか以前の形がセルバンテスの「ドン・キホーテ」だろう。

 これらの物語を積極的に人生に取り入れ、いわば、自分自身のRPGを作り上げれば、ゲームをクリアする以上の感動が得られることは間違いないと思う。愛する貴婦人と倒すべき敵を設定し(FFⅦでいうとエアリスとセフィロスかな、これはハマったので・・・)戦闘を繰り返して、経験値を稼ぐ。

 って、RPGにしすぎかな。ま、人生もゲームみたいなものか。リセットはきかないけど。


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 さて、最後に、このカップルは、元カエルで現王子様のふるさとに帰り、二人は末永く幸せにくらす。

 先ほど書いたように、実際のサンプル、「カエルの王様」式恋愛を成就させたカップルの話でこのお話は終わる。そういったカップルは数少ない。一番最初に書いたように、カエルのほとんどはただのカエルだからである。
 しかし、数は少ないが、実際にいるのだ。

この稀なラブストーリーを成就させたカップルが。

 ちょっと、長い引用で終わりにする。

 研究者たちは最近、元カエルで現在は幸せな結婚生活を送っているハンサムな王子の数を調査した(すべて完璧にいくケースはきわめてまれなため、数が少なかったのはやむをえないという)。理由に関しては元カエル全員の意見が一致した。驚異の変身には三つの要素が不可欠だそうだ。最後まで知らないといいはること、喜んで壁に投げつけられること、空想好きな女性への愛。そして四つ目の要素として、忍耐力があげられる。そう、とてつもない忍耐力である。投げられてから実際に激突するまでに十年以上かかるのだ。
 彼らは謙虚な男たちで、自分の身体的美しさを当然とは思っていなかった。愛する人の空想に自分を適合させたことを喜んだ宇宙からの贈り物だという。変身については、1人の例外もなく、畏怖をこめて語った。なかの1人はアダムの夢にたとえた。目が覚めたら、それが現実だと知ったというわけだ。
 現在の視点から変身前の自分を振り返るのは彼らにとって感動的な体験だそうだ。みなそろって自分の前身を高く評価しており、カエルとしての恋と粘り強さに感謝している。だが、私たちが幼い頃を思い出すときに感じるような、ある種の連続性の欠落のせいで、当時の自分をはっきりとは思い出せない。大変身が元の彼から彼を分離したため、彼は元の彼であると同時に元の彼ではない。より高い形態へと、いわば生まれ変わったのである。単純な主題による最後の、ちょっと贅沢な変奏曲のようなものである。

 ある王子がいうには、夏の宵、愛する人と連れだってカエルの合唱がそこここから聞こえる野道を散歩していると、ときおり笑いとも涙ともつかない感情に心を揺さぶられることがあるが、そんなときには足を止めて愛する人のほうを向き、彼女の瞳のなかに映る自分を確認せずにはいられないそうだ。