2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

本物とは何か〜「画商の罠」を読みました。

アーロン・エルキンズ 秋津知子 訳 ハヤカワ文庫 「今、私の手元にレンブラント(の絵)があるのだが、これをあげましょう」 こんな事言われて、断る正気の学芸員がいるだろうか。レンブラント!バロックを専門とする学芸員には、垂涎の品である。 一応確認…

探偵達への都市の影響〜「フェルモア先生、墓を掘る」を読みました。(ちょっとネタばれ気味)

ロビン・ハサウェイ 坂口玲子(訳) ハヤカワ文庫 確かチャーチルの言葉だったと思うが「人は環境をつくる、しかるのちに、環境が人をつくる」といった意味の言葉があった。住まいや部屋といった狭い意味にもとれるが、広く、住んでいる街にも影響をうけてい…

お笑い分類学〜「馬鹿★テキサス」を読みました。

ベン・レーダー 東野さやか 訳 早川書房 本の題名に「馬鹿」ってまずくないか? と、まず思った。これって差別用語じゃないのか? ののしり言葉であることは確かだし・・・ それに ★。 正直言うとこの★にひかれて、手にとって見た。文字ばかりが並ぶ本の背表…

自分狩り〜「暗殺者」(下)を読みました。

ロバート・ラドラム 山本光伸 訳 新潮文庫 ボーンが殺し屋カインらしい・・・ 下巻の冒頭で、合衆国政府情報部中枢(ホワイトハウスやら何やら)が出てきて恐るべきことを語る。 カルロス同様有名な、殺し屋カインなるものは存在しない。 カルロスをあぶりだ…

記憶喪失のスパイ〜「暗殺者(上)」を読みました。

ロバート・ラドラム 山本光伸 訳 新潮文庫 今回もう一度読んだきっかけは、映画「ボーン・アイデンティティ」をテレビの再放送で見た事である。 この映画の原作はこの作品である。少なくとも設定は同じである。 テレビで見て、そういや昔、原作を読んだな〜…

風の吹く街〜「ウィンディ・ストリート」を読みました。

サラ・パレツキー 山本やよい 訳 早川書房 アメリカはイリノイ州のシカゴは、「風の街」というのがキャッチ・コピーである。古くは、クレイグ・ライスがこの街を舞台に、ジャスタス夫妻とマローン弁護士のシリーズを書いた。アメリカのミステリを語る上で、…

教師の仕事〜「ルアン先生はへこたれない」を読みました。

ルアン・ジョンソン 酒井洋子 訳 ハヤカワ文庫 教師の仕事は細々(こまごま)とした知識を生徒に詰め込むことではない。 生徒を愛することである。「学校に来ている子に悪い子はいない」と自分に言い聞かせ(本当に悪い子は学校に来ないから)、次から次へと…

バナナんバナナんバ〜ナ〜ナ♪〜「バナナ学入門」を読みました。

中村武久 丸善ライブラリー 果物のなかでも、バナナの腹持ちのよさは飛びぬけていると思う。 最近、朝食をバナナにする朝バナナダイエットなるものがあるが、これも、その腹持ちの良さに注目したものだろう。 本書は、バナナなど、熱帯性の植物に関心を持つ…

日記の日記〜「面白すぎる日記たち  逆説的日本語読本」を読みました。

鴨下信一 文藝春秋 これも、日記であるが、日本人ぐらい、日記の好きな人達はいないようだ。学校でも夏休みの日記なる宿題がたいていあったと思う。 なにしろ、戦時中、軍隊で日記を書くことが奨励されていたぐらいである。おかげでアメリカ軍は、戦死した日…

末ながく幸せに!〜「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を読みました。(3)

P・L・トラヴァース 林容吉 訳 岩波少年文庫 日本の年末年始でも、除夜の鐘がなり、108つの煩悩を払う。 除夜の鐘は、TVで見ている限り、12月31日の夜の12時ぴったりに鳴り始めるようだ・・・と思ってネットで調べてみたら、107つを旧年中に最…

空飛ぶペパミントキャンディ・ステッキ〜「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を読みました。(2)

P・L・トラヴァース 林容吉 訳 岩波少年文庫「大理石の少年」 公園にある大理石の彫刻の少年が降りてきて、ある日の午後だけ、マイケルとジェーンと遊ぶというもの。 彫刻だとすっぱだかでも誰も何も言わないのに、生きている少年となると、「風邪ひかない…

知識を持つことと知ること〜「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を読みました。(1)

P・L・トラヴァース 林容吉 訳 岩波少年文庫 メアリー・ポピンズシリーズ。 これは三作目のようだ。 イギリスには、子どもの面倒を見てくれるナニー(乳母)という職業がある。子育てというのは誰にでも大変な仕事だから、ありがたい助っ人である。TV番…

京都の人とつきあう前に知っておきたいこと〜「京都スタイル」を読みました。

甘里君香 新潮文庫 まず、知っておきたいのは、コレである。相手の家の玄関で話していて、「ほな、ぶぶづけでも」と誘われた時。絶対に、絶対に、「いいですね〜、いただきます」なんて言ってあがっていってはイケナイ。陰で、子々孫々までボロクソに言われ…

テレアポ殺人〜「おかけになった犯行は」を読みました。

エレイン・ヴィエッツ 中村有希 訳 創元推理文庫 このヘレン・ホーソーンのシリーズは、毎回ヘレンが、転職し、そこで殺人に巻き込まれるという筋立てのようである。このシリーズを読んだのは、この本が初めてだが。 転職といっても、テレアポなど、かなり崖…

リアル・パイレーツ〜「海賊の掟」を読みました。

山田吉彦 新潮新書 映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のシリーズや、スティーブンソンの「宝島」などから、海賊のイメージはつくられてきたと思う。 とりわけ印象的なのは、宝島のジョン・シルバーである。左足がつけねからなく、松葉杖を器用にあやつる…

階級と殺人〜「気どった死体」を読みました。

サイモン・ブレット 嵯峨澄江 訳 ハヤカワポケミス ミセス・パージェター・シリーズの第一弾である。以降のミセス・パージェターシリーズでパターンとなるのが、ミセス・パージェターが、郊外の住宅地や、パック旅行など、中産階級の人々の集まるところにい…

アイルランド人論〜「とびきり可笑しなアイルランド百科」を読みました。

テリー・イーグルトン(著) 小林章夫(訳) 筑摩書房 アイルランド人、もしくはアイルランド系というとどういったイメージをお持ちだろうか。 きわめておおざっぱに言えば、当然ながら白人で、赤毛、もしくは黒髪が多く、身体が大きい人が多い。酒飲みで、…