伝説の人物〜「レッド・ダイアモンド・チェイス」をよみました。

                  チャールズ・ベノー  坂口玲子 訳      早川書房


 
 家族や親戚の間で、何かと話題にされる人物というのは、いないだろうか。

 何かすると(何もしなくても)なにかと比較対象され、説教のタネにされる。

 例えば・・・

「何々はお前の年では、もう(何かすごいこと)をやっていたんだぞ。それにひきかえお前は・・・(以下説教略)」

 これは優等生タイプ。他にもこんなパターンもある。

「ナニガシ大学に受かったのか、おめでとう。何々は(もっと優秀な大学)だったけどな。」

 逆に劣等生タイプだと、何か悪いことをすると出てくる。

「お前悪さばっかりしていると、何々みたいになるぞ!」

タバコを吸っているのが見つかると、

「何々もタバコを吸い出したのが、悪に転落する第一歩だったんだ」

 
こういう伝説の人物が。

 関係ないけど、虫にもいる。優等生タイプだ。

 東大法学部をでて外交官って・・・勝てる気しない。競争してないが。おじなのだがその子どもも3人全員東大て、すごすぎるがな。

 でも何かと話は聞く。

 さて、それはともかく、主人公、ダグ・ピアスにいるのが、劣等生タイプでやはりおじさんだ。

 主人公がタバコを吸ったり(ちなみに上のタバコに関するものは、小説からいただいた),万引きが見つかったり、ケンカをしたり・・、ま、青少年がよくやる悪さをするたびに、そのおじさんに関するエピソードが増えるという単純な法則があった。

 良くも悪くも、よく噂される人間というのは魅力があるからだと思う。このおじさんは既に亡くなっており、直接は姿をあらわさないが、魅力的な悪党だ。

 ダグはポッツヴィルというアメリカの、ど田舎のビール工場で働く青年で、その工場もクビになった。

 アメリカでも田舎は田舎で、半径50m以内に住み、変わり映えのしない、将来も見通せるような生活。

 クビになったダグはソファに陣取って、テレビリモコンでチャンネルを変える日々。

 そこに舞い込んだ、おじの元ガールフレンドからの依頼。

 おじはシンガポールで殺されたといい、その殺人には関与していたダイアモンドの盗難がからんでいるという。
 シンガポールに飛び、当時の知り合いに話を聞いて事件の真相を突き止めて欲しい。

 こうして、無職の青年に無料の海外旅行が進呈される。わくわくどきどき保証付。


 いや、すごい。ある登場人物の言葉を借りよう。

「面白くないって?このひと月で地球を半周して4カ国を回り(シンガポール、モロッコ、エジプトなど)、遺産相続人の女と寝(アイーシャというモハンマドの最年少の妻と同じ名前のモロッコ女性。アメリカの大学を出ていて、アメリカ人とあまりかわらない)つけまわされ、飛び降り、撃たれ、ブタ箱にぶちこまれ(エジプトのカイロに行く時に何者かにはめられて、バッグに白い粉が!)、カーチェイスをやり、それもすげえ衝突付きだ。・・・それからラグビートーナメントで決勝トライを決め(今までラグビーなんかやったことなかったのだが、飲みの席で不用意に「あ、テレビで見た事ある〜やってみたかったんだよね」と不注意発言をしたところ、たまたまメンバーが足りないラグビーチームで・・・)、おまけにチアリーダーたちとヤって(ヤッてない)」

 これらのうち、いくつかは本物の事件、他は真犯人のかく乱作戦である。

 そう、最後にきちんと謎解きもするし、冒険や、ユーモアはなかなか上等。けっこうなお手前でした。
 そうだ。ダイアモンドも見つかる。

 そうそう、虫の伝説的な人物であるおじさんも会ったことがない。最近は中学の国語の教科書に文章が載ったときいて立ち読みしたときに、初めて顔写真を見た。もう1人のおじ(その人の弟)にそっくりだった。
 イメージが崩れそうで、今さら会う気がしない・・・。