テレアポ殺人〜「おかけになった犯行は」を読みました。

           エレイン・ヴィエッツ  中村有希 訳  創元推理文庫

 
  このヘレン・ホーソーンのシリーズは、毎回ヘレンが、転職し、そこで殺人に巻き込まれるという筋立てのようである。このシリーズを読んだのは、この本が初めてだが。

 転職といっても、テレアポなど、かなり崖っぷちな仕事ばかり。

 このテレアポも、要りもしない浄化槽クリーナーを売りつける相当ブラックな仕事である。

 しかしヘレンには離婚した夫(こいつがヒルのようなヤツで、自分は働かないで、慰謝料がっぽりとる。)から逃げ回っており、住所などが登録できないという弱みがある。だからどうしても、こんな仕事になってしまう。

 今回は偶然、かけた電話の向こうで殺人が起こっているのを聞いてしまう。もちろん、上司や警察に連絡をとるが、「テレビの音だ」などと言われてごまかされ、死体もない。

 頭にきて、自分で調べ始める。

 被害者の女の子のお姉さんと一緒に。

 テレアポも、話していて感じが悪かったりすると、「架け直し」に登録してセールスの電話がじゃんじゃんかかってくるようにするなど、ちょっと面白い。
アメリカでも、日本と同様(どこの国でもそうだと思うが)、「いりません!」ガチャ!と切られるのがほとんど。
 「ちょうどいいとこだったのに、何で邪魔するんだ!」と説教たれられたり(そういう人には、セールス電話鳴り続けの刑である)、逆に売り込みかけられたり。(「なるほど、それもよさそうだけど、私が○mwayで扱っているコレの方がもっといいと思いますよ」)いきなり断る側にまわってしまう。うーん、これはいい手かも。
 
 家主の女性と仲がよく、新しく入居してきた「ヤッピー」夫婦は、「ヤッピー」なんかではぜんぜんなくて、詐欺師であることが偶然わかって、詐欺の現場を捕まえて、追い出す。

 推理小説も、古いのばかり読んでいると、やはりちょっと違和感がある。同時代的な雰囲気が楽しめ、かつ、推理小説としての構成もしっかりしている本書は、ちょっとした清涼剤である。

 ちなみに、最後、そのブラックなテレアポ会社がつぶれ、失業するが、「失業がこんなに楽しかったのは初めて!」なくらい。そこ、ブラックなのも道理で、上司や経営者はイタリアン・マフィアとつるんでいたのである。