死ぬな!日本の男たち〜「男の人ってどうしてこうなの?」を読みました(2)

           スティーヴ・ビダルフ  菅 靖彦 訳   草思社

 警視庁によると、2008年の日本の自殺者数は3万2249人という多さである。世界的にもロシアに次ぐ。うち男性は2万3478人にもなる。去年は、平均して毎月2千人近い男性が、人生に絶望して自殺をはかり、成功したことになる。悲しいことに自殺をするのは、男性が多い。

 男性は、一般的に女性と比べると不幸な人が多いのだと思う。

 女性と比べると比較的、お金を持っていたり、社会的地位の高い人が多い。もちろん、ない人もいるが。

 そういった外面的、物質的な成功はあっても、内面的な空虚をかかえ、空ろな感じを受ける男性をよく見かける。

 美術館やカルチャーセンターで見かけるのは、8割がた女性である。例えお金がなくとも、自分のしたいことをしている女性は幸せそうに見える。自分というものを持っているからである。

 男たちはもっと自分を見出し、自分自身の人生を歩む必要がある。自分の人生を生きてはじめて人は幸せになれるのだ。女も男も。

 

 ほとんどの男性は自分の人生を生きていない。ただ、見かけのとりつくろい方を覚えるだけだ。男たちの行動の大半はみかけをとりつくろい、身の保全をはかるために費やされる。

 というのがこの本の出だしだが、実際そう思う。

 ほとんどの男性は外面は取りつくろっているが、中身がない。感情を失いすぎで不気味だし、女性が自然な感情を表現すると、ま、たまに不自然なまでに感情的な人もいるが、「感情的」だといって非難する。抑圧のしすぎで感情が怖いのだ。何かにおびえ、人がどう思うかを異様に気にする(とりつくろうために)男たちをそこかしこでみかける。

 逆にいうと、「自分」がなく、内面的な充実がないからこそ、お金や社会的成功に依存するのかもしれない。去年のようにな不景気で、リーマン・ショックなどのためお金を失ってしまったときに何も残っていないことに気付いて死んでしまうのかもしれない。お金や社会的地位というつっかえ棒が必要だったのだ。

 
 男性自身もすこしずつ、気付いていると思う。とりわけ若い世代はそうだ。競走馬のように、お金や社会的成功や女性といったゴールを必死に追いかけるが、いつも何か虚しい感じがする。もっとなにかあるはずなのだが・・・、という感覚を覚えるがそれが何かわからない。

 お金や社会的地位や家族に恵まれていれば、幸せなはずという社会通念に支配され、幸せなふりをして過ごす。そういった見せかけが、ごくたまに破れるときがある。砂浜にたった一人でいるときや、家族の死にあったときなど。

 しかし見せかけをとりつくろうことに疲れ果てた男たちが、日々、死を選んでいるのだ。

 男たちは傷ついている。何かが狂っているのだ。それが、自分自身に向けられる時は自殺となり、他者に向かう場合は、手近な妻子やガールフレンドへの暴力や、子どもたちへの性的虐待、さらに見知らぬ人達への無差別殺人となる。こういった新聞をにぎわす事件のほとんどが男性によって行われている。

 たぶん、こういった状況を悪くしているのが、多くの「不幸」と思われる男性自身が、自分が不幸であることに気付いていないことだ。男性たちの病は、少しずつ彼ら自身をむしばみ、ある日突然自殺や暴力沙汰という形で一気に表面化する。うじうじ「相談」したり、感情を表すのは男らしくないというわけだ。

 男性優位社会ではあるが、男性も決して「勝ち組」ではない。彼らも社会の犠牲者である。

 だが男性自身が、彼らの「男らしさ」の思い込み(その中には女性が作ったものもある・・・というか、母親や妻・ガールフレンドの男性像ほど男性に影響を与えるものはないだろう)を再検討し、実際に男性が感じている悲しみや苦しみを克服すれば、幸福になるチャンスはある。

 そうでなければ、レミングのように死や破滅をめざす男性たちの仲間入りである。

フェミニズム運動で女性達は、女性の権利や人間としての尊厳を認めようとはしない外側の敵とぶつかった。

しかし、男性の敵は主として内面にいる。

  • 孤独
  • 強迫的な競争
  • 感情面での臆病さ

 これらを感じ続けることは、「男ならあたりまえ」ではない。

 もし、自分を変えようと思えば、これらを改善し、より幸せで自己肯定的で、自信を持ち、本当の男らしさを兼ね備えた人物になることができる。

 豊かな内面生活を持ち、かつよりよき結婚、仕事、気晴らし、友情をつちかうことは決して不可能ではない。それどころか、実際のお金持ちのほとんどが、幸福な結婚や私生活を持っていて、家庭を「犠牲」にすることは逆効果かもしれないのだ。たしかお金持ちに関する調査ではほとんどの金持ちが1回の幸せな結婚を全うしていた。

 要は逃げたり、自己破壊的になったり、周囲の人を傷つけず自分自身と向き合うことである。

 男性を「解放」する必要性についてはご納得いただけただろうか。

 虫は、この本を全ての男性に配ることで、自殺を防止するプロジェクトが可能だと思う。自殺に限らず、男性に多い性癖はギャンブル依存やアルコール依存など自己破滅的なものが多すぎるのではなかろうか。もっと自分を大切にしなくてはならない。

 具体的にどうすればいいかは次回。