書く時間の長さと作品の完成度〜「フランチェスコの暗号」(上・下)を読みました。

          イアン・コールドウェル&ダスティン・トマソン


  薄くても何回もエントリを書きたくなる本もある。内容がそれだけ深いのだ。

  しかし、これは、上下巻分かれていて、けっこう厚いのだが、今日一日で十分。短めでいいぐらいだ。

 それに、解説の最初で簡潔な、言いたいことを代わりに言ってくれてる文章があった。

ウンベルト・エーコ(「薔薇の名前」)とダン・ブラウン(「ダ・ヴィンチ・コード」)とフィッツジェラルド(「華麗なるギャッピー」)を足して3で割ったようなとかなんとか。

 そう、そういえばどれも読んだのだが、薔薇の名前は面白かったが、ダ・ヴィンチ・コードは、トンデモである。設定が非現実的すぎる。「これはないね〜」というのが感想。華麗なるギャッピーについて言えば、こういう分野のもの(青春小説)は虫はもともと読まないのだが、「名作」という話なので、読んでやっぱり後悔した・・・・。
 「青春」とか「恋愛」とかいうのは苦手である。

 おおすじを書くと、主人公はプリンストン大英文学部の4年生のトム。

  1. 友人のポールを手伝って、難解な文書「ヒュプネロトマキア・ポリフィリ」の解読を手伝う。(ここが薔薇の名前っぽい。中世のイタリアの文書だからである)れが、実在する文書である点が評価が高い。これはこの小説のいいところである。中世イタリアの文書なのにラテン語を使わず(この当時の書き言葉はラテン語)様々な言語を使っている点で難解度が高い・・・。ただ・・・、この文書、ちょこっと内容が書いてあるのだが、かなりグロい。エロいし・・・。裸の女二人に馬車を引かせて、あげくに切り刻むなんて・・・。何語で書いてあってもこの手の文書にそんな価値があるとは到底思えないのだが・・・。この文書の内容が良ければまだしも。ここはマイナスポイント。学問に貴賎はない・・・とは言え、こういった研究を高く評価することは虫には到底できない。何語だろうとエロはエロだろ?と思ってしまう。ょっと話はそれるが、東大の総長に蓮實重彦氏がなったときは、SM関連の本で名前を見ていたので、東大もオワッタ・・・と思ってしまった。日本の最高の大学が終わったってことは、日本の大学教育、いや高等教育が終わったということだろうか。ご愁傷様である。さらにそれるが、先日の選挙の「幸福実現党」とかいうところの、幸福の科学総裁(だかなんだか知らんが)の大川さんという方、東大の法学部のご出身とネット(新聞のHPかなにか)に書いてあった。もし本当なら、二度と学歴で人を判断するのはやめよう。
  2. しかし後半、「この文書は何番目の文字を使う」といった暗号文になっている。しかも貴重な文書のありかを示したお宝の地図みたいな。(ここが「ダ・ヴィンチ・コード」っぽい。狂信者サヴォナローラ焚書を逃れて隠したとかいう・・・「ダ・ヴィンチ・コード」と同じく、それはないだろう・・・。)この手の暗号に夢中になるのってせいぜい中学生ぐらいまでだろう。小学校くらいの時にタヌキの絵が描いてあって、無意味なタを抜くと意味が通じる手紙(これは小学生向けの雑誌で見た)とか、携帯小説で、誤字をたどって読むみたいなのを思い出す。ま、子どもだましである。
  3. トムのお父さんもこの文書の謎を解いていたとかいう因縁のあれこれ、仲良しのお友達、2年のガールフレンドなどなど、「華麗なるギャッピー」ぽいところである。このパートがけっこう長く感じた(イヤなので長く感じたのかもしれない)この暗号の解読とデートなんてべつに両立できそうなもんである。しかし、両立できなくなって、ポールの手伝いをやめる。彼女の方も、嬉々として、解読を手伝っていたのに、そんなのイヤと言い出す。ここらへんはよくわからないが、深入りは止めよう。とにかく、このパートが多いにうんざりした。ところでプリンストン大学といえば、アイヴィーリーグ(名門)である。そして、こういった名門には学生の悪ふざけがつきものである。2年生がみんなですっぱだかになるとか、学生の団体に入るために何かしなくてはいけないとか(これはちょっといじめっぽい)そういうのがあるというのは聞いているが、別にうらやましいとは思わない。成人儀式の一つだな・・・と思うくらいである。誇らしげにこういった事を書いているのを見ると(原作者の1人はプリンストン卒)、いい加減に大学を人生のハイライトにするのはやめたら・・・?と思ってしまう。余計なお世話だが。

 というわけで、この本はあまりおすすめできない。作者(なお2人の共作)によると、6年もかけたそうだが、6年もかけてこの程度?という感想である。