パラレルワールド〜「夢の10セント銀貨」を読みました。

   ジャック・フィニィ    山田順子 訳     早川書房


 いや〜SFってなんか苦手である。なぜだろう。小説は架空の話を書くものだが、SFは、設定自体が架空である。

 その設定になんか、著者の思い込みが反映されているような気がするのだ。

 本を読むのは大好きだが、SFはあまり読んだことがない。星新一と「新世界」(たしかハックスリーだったと思う、題名もちょっとうろ覚え)、「タイムマシン」ぐらいか。これはジュール・ヴェルヌであった。

 ジャック・フィニィはミステリも書いていて、それはけっこう読んだことがある。まぁまぁ面白かった。

 SFも書いているというのは、小耳にはさんでいた。これはSF・・・だと思うけど、長編の星新一っぽい感じである。


 ぶっちゃけていうと、虫はそれほど面白く思わなかった。後半はけっこう、読むのが義務みたいな(ここまで読んだんだから、読み終わろう!的な)感じがしてしまった。

 設定自体は、ちょっと面白いのだが。

 ある男、現実の生活に全く満足していない。仕事もしょうもないのだし、奥さんも実際には好きだった初恋の人ではなく別の人としており、その結果全くうまくいっていない。いつも無視してるし、ちょっと目をつぶって、私の着ている服をいってごらんなさいと言われて、間違える。・・・離婚秒読みなのも無理はない。あ、でも、奥さんも新婚のころにお風呂に入ってる間に服を全部隠したり、出勤するちょっと前に「あなた、私のこと愛していないのね・・・。」なんて言い出すのはちょっと・・・、これは確かに殺したくなる。出勤前は泥仕合はやめよう。
 ところが、パラレルワールドでは(10セント銀貨で、公衆電話のようなところから行くのだが)、仕事では大成功、奥さんも昔好きだった初恋の人と結婚していて、家庭円満である。

 なのに、前の奥さん(パラレルワールドに来る前に結婚していた方)にあい、彼女が婚約したところから、なぜか彼女を追っかけはじめる(ここらへんがよくわからない)。
 旧世界にあって、この世界にないもの、例えばジッパーなどを使って、さらに成功し、彼女を手に入れよう、婚約を阻止しようと活躍する。独占欲というやつなのだろうか。
 なぜかそれがうまくいってしまい、前の奥さんと結婚でき、そして・・・また彼女を無視しはじめる。

 人間ってなんで欲しくもないモノを追っかけるのかなという感じが残る。

 ま、気持ちはわからんでもない。

 楽しかったのは、パラレルワールドのバスで、客全員がコーラスしてたところ。なお指揮は主人公の男。これはやってみたい・・・気がしません?映画「フィッシャー・キング」でロビン・ウィリアムズが、精神病院でやっていたけど。