メタ・ミステリ〜「クリスティー記念祭の殺人」を読みました。
キャロリン・G・ハート 山本俊子 訳 ハヤカワ文庫
「みなさ〜ん、アガサ・クリスティーを愛してますか〜〜?」
「イエース!!」
「誰が世界一のミステリを書いたでしょう?」
「クリスティー!!!」
もうここ読んだだけで行きたくなった。クリスティー記念祭に。
これは、ミステリ専門の書店<デス・オン・ディマンド>の主催するアガサ・クリスティーを称える催しである。
アメリカ人を父親、母親がイギリス人である、この作家は、たくさんの作品を残している。彼女が世界最高の推理小説家であると思う。
その産み出した探偵、エルキュール・ポアロや、ミス・マープルも有名である。
この催しで、殺人が起こるのだが、「ナイルに死す」に出てくるのとそっくりな植木鉢が落ちてくる殺人(未遂に終わる、作品も同様)、「ミセス・マギンディは死んだ」の被害者の偽名で参加した参加者が、その作品に出てくる方法で(シュガーカッターで殺される)殺されるなど、パロディてんこもりである。
うんうん、あの作品のあの人ね、そうそう。・・・とニヤニヤするのが、正しい読み方だろう。
主人公は、ミステリ専門の書店<デス・オン・ディマンド>の店主、アニー・ダーリングである。かっこいい夫、マックス・ダーリングは、名前のせいか、TVドラマ、「奥様は魔女」のダンナ役を思わせる。もうちょっとかっこいいけど、お飾り的存在である点は共通する。
このカップルは、アニーが自分でも言っているが、アガサ・クリスティーのトミー&タペンス・ベレズフォード夫妻を思わせる。トミー&タペンスは、クリスティーの作品の探偵としては、さっき述べたポアロとミス・マープルの次ぐらいに有名だろう。このシリーズは、推理物というより、冒険物の味付けが強いのが特徴である。楽しく、軽く読める。
この二人組で、主導権を握っているのは、タペンスであり、探偵役も彼女である。
アニーが探偵役なのと同じである。
それに、このトミー&タペンス物は、ホームズやブラウン神父といった、探偵のパロディであり、これも、メタ・ミステリ・・・つまりミステリを語るミステリである点で同じである。
クリスティー以外にも、読んだことあるミステリが引用されるとちょっと嬉しい。
ミステリとしても、まあまあ。
犯人がわかりやすすぎるきらいがあるが、まークリスティー以降、疑心暗鬼になることを覚えたせいかも。
ミステリ評論を兼ねたミステリ。お得かもね。