この世のでき方〜「魔術師のおい」を読みました。

              C・S・ルイス   瀬田貞二 訳    岩波少年文庫


  《ナルニア国物語 6》

第5話の「馬と少年」は紹介済なので、このナルニア国シリーズも、この話と最後の一話をのこすだけになった。

「馬と少年」が旧約聖書を思わせるという話はしたが、これも旧約聖書の一番最初の本、「創世記」を思わせる。

この話は、言ってみれば、ナルニアの創世記である。

 
 そこでちょっと外れるが、旧約聖書の創世記をちょっと紹介しよう。

 旧約聖書キリスト教聖典(あと、ユダヤ教聖典とも重複部分がある。創世記は重複)だが、この世ってこんな風にできたんじゃないかなと読む人に思わせる説得力がある。長い間人々に読まれ続けてきたのには訳がある。

 進化論などの科学的学説の方が、「事実」としてはその通りであると思う。

 しかし、事実ではないにせよ、何かを語る寓話としては、依然として読む価値があるのではないか。では、紹介する。

 神様はまず、「光(ひかり)あれ」と言うと光があった。(このセリフ、何か名言である)光を昼と名づけ、やみを夜と名づけた。(1日目)、二日目には、天をつくった。三日目には、海と大地をつくり、大地に草木をつくった。四日目につくったのは(読みながら書いているがよくわからない)、太陽と月のようだ。今、改めて読むと重なっている記述が多いし、何を具体的に造ったのかよくわからない。5日目に造ったのは、海の生き物と鳥。6日目は地上の動物をつくったようだ。しかも、動物と家畜と地に這うもの(ヘビのこと?)に分けている・・・。家畜というところが牧畜民族によって書かれたっぽい。そうそう。それからそれらを治める人間を、自分のかたちになぞらえてつくった。

 このようにして、6日でこの世を創り、7日目はお休みになった。

 これが、現在、私達が日曜日を休日として、学校や会社を休む習慣の大元である。日本では、明治期にグレゴリウス暦を輸入した時に、この習慣も輸入した。正確には、安息日といい、仕事をしてはいけない、教会に行って精神的なリフレッシュをはかる日とされてきた。休む時はしっかり休んでこそ、勉強や仕事もはかどるというもの。合理的な習慣である。

 以前にも書いたかもしれないが、キリスト教では、聖書の記述を月曜日から7日目とするので、安息日は日曜日である。聖書の同じ記述をモトにしながら、ユダヤ教では日曜から数えるので、安息日は土曜である。さらに、イスラム教のコーランも、(おそらくムハンマドの友人がクリスチャンのため)同様の部分があると思われるが、こちらは、土曜から数えるので、金曜日が安息日である。

ちょっと話がずれた。

 この話の中で、アスランが同様にナルニアをつくっているところがある。アスランは歌いながら、ナルニアをつくったのだ。虫としてはこっちのほうが良いと思う。
 ナルニアの世界には物言う動物がいるが、それは最初の段階でアスランに選ばれた者の子孫のようだ。だから、そうでない者もいるわけである。

 ☆      ☆     ☆

 さて、聖書なんて全く縁のない人でも、アダムとイヴの話は知っている人が多い。

 アダムとイヴはエデンの園というところにいたが、善悪を知る木の実を食べることは禁じられていた。ところが、イヴが、ヘビ(最も狡猾だそうである)に誘惑され、それを食べてしまう。アダムも側にいたので、一緒に食べた。この木の実が何かは、聖書には書いていないが、りんご説が出回っている。この木の実を食べて初めて「ハダカが恥ずかしい」という感情を覚えたという。そこで、いちじくの葉を巻いたとあるので、知恵の実=いちじく説も強力である。神様はそのために二人をエデンの園から追放し、人生には苦労がつきものになった・・・。

 この本の中でその役割をするのは、主人公のディゴリーとポリーである。

 ロンドンに住む女の子、ポリーは、ある日、隣の家にディゴリーという男の子が引っ越してきたのを知る。ディゴリーはお母さんの兄弟・・・おじさんの家に、お母さんの病気の治療のためにやってきたのだ。だが、そのおじさんは魔術師だった。そのおじさんの魔法で、二人はナルニアも含まれる、異世界に飛ばされることになる。

 アダムとイヴの話では、タブーを破るのは、イヴだが、この二人では、ディゴリーである。ナルニアの前に行った異世界で鳴らしてはならないと書いてあった鐘を鳴らし、恐ろしい魔女を目覚めさせてしまう。(後の白い魔女らしい・・・でも魔女多いな・・・)ディゴリーとポリーは、その魔女と貸し馬車屋のおじさんをナルニアに連れてきてしまう。悪を持ち込むという罪を犯したので、北の方に行って、リンゴの実を取ってくるようにアスランに命じられる。逆である。

 ディゴリーは後のカーク教授、魔女が街灯の鉄の棒を折り取ったのが成長して(?)、ルーシーとタムナスさんが出会った街灯になる。

 ではでは。