野球をするイギリス人!〜「墓場貸します」を読みました。
カーター・ディクソン 斎藤数衛 訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
《ヘンリー・メリヴェール卿シリーズ》
この著者、カーター・ディクスン(別名:ディクスン・カー)はアメリカ人である。
しかし、イギリスをこよなく愛し、彼の有名な名探偵、H・M卿もフェル博士も二人ながらにイギリス人である。ほとんどの作品がイギリスを舞台にしている。中には、昔のイギリスを舞台にした歴史ミステリもある。だからイギリス人だと思ってる人も多いのではなかろうか
しかしながら、推測するに一つだけ我慢ができないものがあったようである。
それは・・・、アメリカ人が神から与えられている熱情・・・野球への愛である。(日本人も)
イギリス人が同じような情熱を示すのはクリケットである。試合がやたら長いってことしか知らないが。
ここだけは、本来の野球好きが我慢できなかったのだろう。
H・M卿、ヘンリー・メリヴェール卿は大の野球ファンなのだ。
ありえない。
このヒト、本当にイギリス人???
しかも、実際に打席に立ってホームランかっとばすし。
この本の舞台はアメリカである。どうしても、野球をやらせたかったのだろう。
「私を野球に連れてって」と歌うのはちょっといいな、どういう曲なのだろう?
☆ ☆ ☆
地下鉄で、気のいい私服警官をダマして、「ブードゥー教の呪いをかけたから、ただで利用できる」なんてところがいい。これはおそらく、あらかじめトークン(地下鉄用の硬貨)を入れておいて、その次に入ってくるひとを通す仕組みで、ちょっとしたマジックを演じたのだろう。
それを聞いて大群衆が「今日は地下鉄をタダで利用できる日」と勘違いして押しかけても・・・当方では責任を負いかねます。三八計逃げるに如(し)かず!
はじめてあった、美女クリステルに最高のお世辞を進呈するのが良い。お世辞ってこんな風に言うものか〜〜、今度美人に遭ったら言ってみたい気がする。
「では私をお認めいただけるのですね、サー・ヘンリー。」と、クリステルは気取って言った。
「あなたを認めるだって?」とメリヴェールは前に身を乗り出し、自分では熱烈なお世辞だと思い込んでいる言葉を彼女に捧げた。「とんでもないこと。わしは、フランスの水兵どもがいっぱいのアルジェのパブであんたに会うのは嫌だね。」
「え?ど、どうしてですの?」
「それはだ」とメリヴェールは理由を説明した。「水兵があんたを奪いあって、殺し合いをはじめるからだよ。これは大量殺人になるぞ」彼の小さな目は彼女の上に据えられた。
「だが自分のために男どもが殺しあうのもまんざらすてたものではなかろう。」
でも、実際に言うとなると、アルジェがアルジェリア(国の名前)だってことも知らない人が多いだろうし、どこにあるかも知らないだろうな(アフリカの北の方)。そして、フランスの水兵がなぜそこにいるのかも(アルジェリアはフランスの植民地だったから)。
かといって、同じくらい荒くれてる他の場所もちょっと思いつかない。日本だと、露骨に女をめぐって殺し合いをする図というのはちょっと思いつかない。影ではやってるのかもしれないけど、すくなくとも表面には出さない・・・。
なんて、前提となる知識を教えてたら、なんかね〜先生みたいでイヤ。めんどい。
やめよっか。でも気の利いた表現なんだけどな・・・。
☆ ☆ ☆
さて、この本のあらすじに戻ろう。
TVとかで見るけど、手品で時々、人間消失ってやる。関係ないけど、手品師の芸名ってなんか面白い。マギーとかセロとかね。
箱の中にいたはずが、消えた!とか、着替え用のカーテンみたいの中ににいたのに消えた!とか。
見た事ある?
でも、こういうのって、身体を隠した時点でなんか、アヤしい・・・(消えるのね?あ、やっぱりね)
と思いません?
この本の中で、見事に実演される、人間消失マジックの舞台は・・・なんと透明なプールである!
女を囲い、財団の資金を横領していると噂されるフレッド・マニングは、プールにいきなりザブンと飛び込む。帽子や着ていた服は浮かび上がってきたが、本人は浮き上がってこない。5分近く・・・。
プールの底を探し回り、あげくに水を抜くがやっぱり出てこない。
目撃者はH・Mを含めて3人ほど。3人ともプールに飛び込んだフレッド・マニングは見たものの、出てくるところは見ていないという。
どこに消えてしまったのか?どうやって?
このトリックは実演可能なんじゃないかな〜と思うがどうだろう。シチュエーション的にも、人間消失のベストに近いと思う。
ではでは。