あなたの中の名古屋人〜「名古屋人と日本人」を読みました。

                    岩下祥史       草思社

 って名古屋人も日本人だろう!というツッコミとともに手に取った。

 読んでみると日本人の中には、名古屋人的な部分があるという趣旨である。それならやはり、日本人の中の名古屋人といった表題が適切だろう。このままでは、ユダヤ人と日本人のパクリの疑い濃厚である。

 名古屋がこれだけ人気なのは、日本人的な、しかもちょっと昔の日本人的なところが濃く残っているからだと思う。名古屋のことを笑うにせよ・・・(しかし本当におかしいので)、なんとも懐かしい感じを覚えるのが人気の秘密であろう。

 虫は名古屋の出身ではないが、名古屋関連の本は楽しく読ませていただいている。「名古屋の謎だぎゃあ」といった本も読んだ。立ち読みだが。


 自動車産業が発展したことからわかるように、「知識」や「思想」、「制度」といった抽象的なものより、具体的な「モノ」を好む。

 こういった具体的な「モノ」を好むのは、日本人全般もそうだと思うが、とりわけ名古屋に色濃くあることはたしかだ。

 虫の考えだが、島国であることと関係するような気がする。というのは、イギリス人も、抽象的な議論より、具体的なこと、現実的なことを好むからだ。

 抽象的観念論を好み、それを自由にあやつっているようにみえるのは、ヨーロッパではフランスなどのラテン系の国である。ヴォルテールなど、哲学者を多く輩出している。
 アジアでも、中国人は抽象的観念論を好むように思われる。哲学者も多い。以前から思っていたが、フランスと中国はなんとなく似ている。どちらも、自国の文化に最高の誇りを持っていて、農業国である。

 これに対して、日本はやはりイギリスと似ている。現実的で具体的なことを好み、口下手である。

 とすると、島国と大陸の国ということから、環境がつくりあげたのかもしれない。

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 そういえばかなり前のことだが、中国のペキンに行った時、テレビを見ていたら、日本料理を取り入れた店というのが出てきた。世界に名だたる中華料理だが、日本の料理を取り入れるなんて感心感心!と思ってそのまま見ていた。日本に限らず、外国の料理を取り入れるのは、中国にとっても有益だと思ったからだ。

 それはトンカツ屋さんだった・・・。ま、いいとしよう。

やはり豚肉を食べる中国人にはぴったりかもしれない。

 日本の有名な店で、何年か修行したというシェフが、誇らしげに教えてくれたトンカツの料理法はこうだった。

 「豚肉に衣をつけ、揚げる。」

 うんうん、おいしそう。

 「その後、このタレにたっぷりつける。」

 といって、画面にあらわれたのは、茶色いみそだれだった。

 ・・・

 それ、名古屋ローカルだから。日本にたくさんあるとんかつ屋さんのなかでは、特殊なほうだから。

 どうして普通のとんかつ屋さんで修行しなかったんだろう・・と思いつつ、流行ってるようだから中国人の舌に合うようならいっか・・・と思った。