ネットとのつきあい方〜「ウェブ炎上  ネット群集の暴走と可能性」を読みました。

           荻上チキ      ちくま新書


 「炎上」つまりウェブ上の特定の対象、ブログやSNSの日記掲示板に批判のコメントが殺到し、運営者だけでは管理しきれない状態になることを言う。

 そうそう、この際当日記にアクセスしてくださる皆さんにお礼を言おう。ありがとう。
 炎上もさせずに、ご覧いただいて感謝する。カウンターを設置させていただいたが、やはりアクセスがあるのは嬉しいものだ。
 アクセス数ばかりではない。アクセス解析で、ご覧いただいているブラウザとか(虫は詳しくないのでよくわからないが)見ることができる。とりわけ楽しんでいるのはアクセス元の地域である。他のブログはどうか知らないが、この本の虫日記は海外からのアクセスがけっこう多い。アメリカは大体毎月必ずあり、いろいろな州がある。2月は中国や香港からのアクセスがあった。3月はインドから!比較的外国人作家の本を取り扱うためだろうか。外国にいる日本の方などで日本語で読んでいるのかか、翻訳して読んでいるのかはわからないが、熱烈歓迎する!

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 「炎上」として有名なのが、「五体不満足」の乙武 洋匡さんのブログの炎上や、モーグルスキーヤー上村愛子さんのブログ炎上であろう。虫も一応聞いたことあった。
 「JOY祭り」はこの本で初めて知って、ネットで調べてみた。「JOY」というハンドルネームの女性が、飲食店で夫、弟夫婦と子供達で食事をしていた。その際、子どものしつけの足りなさをぼそっと言ったという店員に怒り、制裁を加えた・・という話をネットでしたため、他のネットユーザーの怒りを買い、HPが炎上したのみならず、本名や住所、その飲食店の名前などもどこからか公表されるという恐い事件である。
 いや、この人や家族のしたことは、確かによくない。でも、これってリンチの一種でしょう。他のネットユーザーのしたこと。これは明らかに「言論の自由」の範疇を超えていると思いますが。
 他にイラクの人質事件の「自己責任」バッシングなんかネット発である。


 炎上を起こさせるモノとして有用な概念は、「サイバーカスケード」である。
 カスケードとは小さい滝を意味するが、サイバースペースでは各人が欲望のままに情報を取得し、議論や対話を行っていった結果、特定のーたいていは極端なー言説パターン、行動パターンに集団として流れていく現象をいう。

 ネットは知識の入手が簡単なので、もともとその人の持っている偏見が拡大される機能を持つ。
 ・・・つまり、例として、○○さんという名前の人はバカであるという偏見をもともと持っていたとする。
 「○○   バカ」で検索すると、○○さんという人がバカなことをした事例がたくさん出てくる。
 それを見て「やっぱり○○さんという名前の人にはバカが多いんだな」と偏見を強める。
 それを自分のHPやブログに書く。そうすると、同様の偏見を持った人のトラバやコメントが来る。その人達のHPやブログに遊びにいき、相互に強化しあう・・・といった具合である。

 人はもともと、個人の先入観に基づいて他人を観察し、その先入観に都合のいい情報だけを集めそれによって自分の先入観を補強する性質がある。(確証バイアスという)

 これはネットに限らない。本を選ぶ際にもそういう部分はある。さらにいえば、友達付き合いで自分と似たタイプと友達になりやすいというのもそういった事だろう。
 ただ、ネットはその過程が早いと思う。情報を得るのが早いからだ。

 いわゆるネウヨ(ネット右翼)やネサヨ(ネット左翼)の過激な意見をネットでよく見るのは、そういうことだったのか〜。もしかしたら、面とむかってしゃべるより過激になりやすいのかもしれない。

 教えて〜みたいなネットの相談コーナーも、せっかく事情をうちあけて相談してくれているのに、その弱みをそのまま叱りつけたり、身もふたもない回答を見ることがある・・・。てか、相談ちゃんと読んでねーだろ!という回答。こういう「悪い回答」の方が量産が容易なので、いつのまにか水準が低くなる・・・と思う。

 いや〜、気をつけよう。自分を相手に合わせて、ちょっと不愉快なことも我慢したほうがいい。自分に合わせた相手ばかり選んでいると、成長がとまり、(いっぱい友達がいるように見えるが実質)自分だけの世界に入ってしまう。

 そういえば、ネット自殺は最悪の例。もともと自殺志向の人間がネットを通じて、その意志を相互に強化しあうという・・・。
 ネットは、「エコー・チェーンバー」でもある。つまり自分の声のこだまに聞き入る小さな部屋なのだ。

 物理的にというより、精神的に自分を開くこと!本当に重要である。

 そう考えると、まだ、本のほうがいいような気がする。本の場合は読んでる間はその著者に合わせるからだ。できるだけ様々な著者やジャンルの本を読めば、反対意見も聞くことができる。

 ネットにせよ本にせよ、本当に大切なのは自分と違う人間も「理解しよう!」とする気持ちかもしれない。

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 サイバーカスケードの分析の中で、この本が紹介している概念がちょっと面白いので紹介する。

 ちょっと話がそれるが、「タスポ」ってご存知だろうか。タバコを吸う方なら大体ご存知だろう。タバコの自販機で購入の際にピッとかざす、「もうタバコが吸える年齢ですよ」ということを証明するカードである。導入キャンペーンとかやっていたから、もう導入されているのだろう。

 アメリカの憲法学者ローレンス・レッシグが著書『CODE』で主張するには、人の行動を制約する方法には4種類あるという。

  1. 法で行う。 未成年者の喫煙は法律で禁じられている。
  2. 社会的規範で抑制する。 若者はタバコを吸ってはいけないという社会的コンセンサスをつくる。
  3. 経済的制約。 タバコの値段を上げれば、経済的に豊かではないことが多い若者は吸えない。
  4. アーキテクチャ、環境技術的な力。 まさにタスポがそうである。未成年が自販機でタバコを買おうとしてもタスポがないと買えない。他にニコチンの量やフィルターをコントロールする方法も挙げられる。

 このように、環境的に〜することを難しくするというのはまさにネット上で行われていることである。

 これからはそういった規制が主流になると思う。

 でもそういう大衆操作ってなんかな。会社が商品買わせたり、世論の誘導とかも可能な気がする・・・。

 実際、社民党の党首の福島瑞穂さんについて、全く言っていない「発言」2ちゃんねるを通じてコピペが出回ったことがあり、筆者はこれを検証している。これもひどい。

 ネットでは雪だるま式の暴走が起き易い。ナダレに注意して、適度につき合ったほうがよさそうである。