社長が落ちた甘い罠〜「大胆なおとり」を読みました。

             E・S・ガードナー   中村能三訳   ハヤカワ・ミステリ文庫

《ペリー・メイスンシリーズ》

 このシリーズは弁護士のペリー・メイスンが、秘書のデラ・ストリート、私立探偵のポール・ドレイクと部下たちの力を借りて、法廷で依頼人の無実を証明し、犯人を割り出す法廷推理小説である。
 依頼人を守るため、証拠をでっちあげ・・・まではしないが、発見した証拠をすぐに警察に渡さないなど、ちょっとスレスレっぽいこともするけど、大体において法を守り、真犯人を割り出す。
 短い会話とスピーディーな展開が持ち味である。虫は、ラム君のシリーズの方がどちらかといえば好きだけど、こちらも捨てがたい。なにより、推理小説として一定の質を備えていて、他にもいっぱいあるけど、安心して読める。軽いからすぐ忘れるけど。


 さて今回依頼人となるのは、とある石油発掘会社の社長コンウェイである。
 コンウェイの所有する会社について、以前の重役のギフ・ファレルが、コンウェイの経営がなっていないとして、新聞に会社の委任状を求める広告を出していた。もし、会社の株主がこれに応じたら、会社はのっとられてしまう。
 そこにロザリンドと名乗る謎の女性から電話がかかってきて、ファレルが取得した委任状の株主の名簿を渡すことができるという。
 ためらいは覚えたものの、なんとかのっとりを防ぎたい一心で女性の指定するホテルの部屋を訪れる。コンウェイは独身なので、性的スキャンダルはそれほど恐くない。
 ところが、その部屋では、そのロザリンドと同居しているという別の女性が、頭にバスタオルを巻き、顔はパック剤で覆われて、服はほとんど脱いだ状態で出てきた。
 コンウェイが用件を言っても信じてもらえず、銃をつきつける。
 やむを得ず、その銃を奪って、部屋から帰った。(どうもその女性は、コンウェイに銃を押し付けたようである)

 その部屋から銃で撃たれた女性の死体が発見され、ファレルがのっとり工作の手伝いを頼んだ証券会社の女性だと分かる。しかも、奪ってきた銃には発射された形跡がある。


 これは罠だった!(やっぱりね)
 そこで、高名な弁護士ペリー・メイスンに依頼を頼む。

 死亡推定時刻(胃の中のグリーンピースがカギである)、その女性が誰か、など、二重三重の見せかけが事件を複雑にするが、タネをあかせば単純。死体を利用したおっかぶせゲームだったことが分かる。

 ホテルのエレベーターガール(ちなみに椅子に座っているようだ)が、チョイ役だけど、なんか好感が持てるキャラクター。彼女、ポール・ドレイクに毛皮やディナーをねだっているところを見ると、ほれたらしい。

 やっぱり、肩のこらない推理小説はいい。さらっと読めるし。


 それではまた。