子供たちの夢〜「炉辺荘のアン 第七赤毛のアン 」を読みました。

        モンゴメリ 村岡花子 訳    新潮社


 かなり前のことだが、交差点で信号待ちをしていた。虫は急いでいたので、なかなか青にならないので、いらいらしていた。

 すると虫の前にいた、小学校低学年ぐらいの自転車にのった男の子は、もっと急いでいた様子で、自転車の上で、立ったりすわったりしながら「あ〜ん、早く青にならないと遅れちゃうよ〜〜」と小さい声で言っていた。
 そのひとりごとはえんえんと続き、「あー、おくれちゃったらどうしよう。あそぶ約束したのに〜。」

 突然、手をメガホンの形にして、叫んだ。お友達の家の方向に。
「○○ちゃん〜〜、今行くから待っててね〜〜!」

 可愛い・・・。声がとどくわけないとは思うが、可愛い。

 その後信号が青になって、その子は自転車で行ってしまったが、今頃どうしているだろうか、どんな大人になったのだろう。

 自分の声が相手に届くとか、墓地の横を通る時は息を止めなければいけないとか、子ども時代には妙な思い込みを持っていたのではなかろうか。なんというか、ある種の魔法のようなものでつつまれていた部分があるように思う。その魔法の霞が、大人になると晴れてしまったようで、さみしい気がする。

 赤毛のアンアン・シャーリーも大人になり、少女時代にはあれほどふけっていた空想も、子どもたちの世話や家事で忙しくて、そんなにふけるヒマがない。

 代わりにアンの子供たちの夢や空想を1人ずつにスポットライトを当てて描いたものである。さすがにアンの子どもだけあって、想像力豊かである。大人からみると、不可思議な思い込み、思いもよらない空想を子供達は抱く。
 また、友だちのデタラメをそのまま信じてたりする・・。


 ジェム、ウォルター、シャーリー、双子のナンとダイ(もちろん誰の名前をもらったかわかりますよね?親友のダイアナである)末っ子のリラ。子どもにまた恵まれたものである!
 でも、この子たちは、アンが優しく見守り、相談相手になるので幸せである。

 
 炉辺荘はイングルサイド。家庭的ないい名前である。孤児だったアンは、やっと念願の自分の家族、それも大家族を持つことができたのである!

 新婚時代の「夢の家」もいいが、アンはもう、しっかり落ち着いたという感じがする。赤毛のアンシリーズでは、アンが主人公なのは、これで最後である。「アンの娘リラ」では、脇役に降格してしまう・・・これも、主人公は子供達かもしれないが、順繰りにスポットライトをあてる形である。

 子どもの空想を楽しんでいるうちに、なんとなく読んでしまった。子ども時代の夢を思い返すのに楽しめる本である。

 それでは。