霊媒のカラクリと死〜「降霊会の怪事件」を読みました。

          ピーター・ラヴゼイ  谷田貝常夫=訳  ハヤカワ・ミステリ文庫


 昨日と同じく、19世紀末を舞台とした、クリッブ部長刑事のシリーズである。助手のサッカレイ巡査も出ている。


 さてと、降霊会、これは英米推理小説を好んで読むひとだと、ある程度ご存知ではなかろうか。

 アガサ・クリスティは、降霊会そのものではないけれど、その道具たてを借りて、謎解きを明かしたり、登場人物の反応を探る道具として使っている。怪奇趣味のカーも、使っていたような気がする。

 何人かで丸くなって手を取り合い(イカサマをさせないためである)、霊と話すのである。霊はコツコツという音(小さいテーブル)で答える。

 日本でいう「こっくりさん」である。虫もやったことがある。10円玉があたかも答えを教えてくれるような動き方をする。参加者は皆指をそっと置いているだけなのに。しかしこれは、無意識下の運動として完全に科学的に説明がつく。

 降霊会は霊媒と呼ばれる人たちを使い、暗いところで輪になって手を握りあい、死んだ人の霊と話す。

 暗いところで、異性の手を握るチャンスがあるのだから、降霊会がヴィクトリア朝のロンドンで流行るわけである。

 コツコツ音で会話をする。(大体霊媒か共犯者が立ててる)
 
 イエスが3回、 ノーが1回。
 誰が決めたのか知らないが(霊界語?)、2回を抜かしてるところがなかなか合理的である。

 こっくりさんだと、紙に書いた文字の上を移動するのでそれを読めばいいが(わかりやすい)、こちらは暗いところでやるので、アルファベットをAなら1回、Bなら2回というふうに鳴らしてつづる。これも誰が考えたんだろう?わかりにくいことおびただしい。この本のなかでも、「W」(ABC・・と数えるとすんごい後ろである)の後「A」だ!というのがあってよくわかったなぁと感心した。しかも、その時点で死んだウォルター叔父さんが話してるってことがわかるのだ。わかった人は霊媒師の協力者(サクラ)だったわけだが・・・。やっぱわかんないでしょう。うん。

★★★

 降霊会のあった家での盗難事件を捜査していたクリッブ部長刑事とサッカレイ巡査は、霊媒の男の死も調査することになる。

 霊媒の男の生い立ち(なんとなく、ディケンズを思わせるような哀れな生い立ちである)、降霊会のカラクリ、出席者の入り組んだ人間関係が明らかになる。

 その霊媒の男がイカサマでないことを証明するため、微流の電気を流して、霊媒師が手を離すとわかるようにするという、当時にしては、科学的な方法で霊の存在を反駁しようとする。

 それを、また科学的なトリックで、霊媒師があざむくところが愉快といえる。(普通は電気を通さない物質も濡らすと・・・)

 後半の謎解きには、犯人ばかりでなく、降霊会で実際に何があったかを証明し、そのイカサマを一つ一つ見破るところが面白い。霊がなぜ、オレンジを投げたかという理由なんてすばらしい。(答、花びんを倒すため)


★★★

 ところで・・・この訳者の方・・・もしかして・・・

 と思って、ググッてみたらやはり、そうらしい。同一人物だ。

 虫の学校のころの国語の先生である。ヤタガイ先生っ・・・びっくりした〜〜

 お久しぶりです、ご本拝見しました。

 いや〜、アタマ良さそうな方でしたね。本当に。