人をモノあつかいにしない〜「結婚について」を読みました。
「ハーリール・ジブラーンの詩」より 神谷美恵子 角川文庫
このところ、レバノン生まれの詩人、カーリール・ジブラーンの詩の紹介が続いたが、今回で最後にする。最初はまとめて書いたのだが、量が多くなりすぎた。それで、詩の一編ごとに分けることにしたのだ。
この3編とも、「預言者」という題名の詩集に載っているものである。カーリール・ジブラーンの詩は日本であまり知られていない上に、前も書いたように大好き!なので、紹介をかねて長めにした。
宗教的には、クリスチャンの両親のもとで生まれ、マロン派のキリスト教系の学校に通っているから、キリスト教的背景を持つといえる。中近東はイスラム教一色と思われがちだが、少数派ながらクリスチャンもいる。テニスのアンドレ・アガシ氏はイラン人だが、クリスチャンである。中近東のクリスチャンは、おそらく、キリストを神とし、三位一体説を定めた公会議で意見が合わず、中近東に去っていったごくはじめの方で枝分かれしたひとたちであろう。マロン派というのは知らないけど、推測してみた。
さらにいえば、イスラム教自体も、かなりキリスト教の影響を受けている。というか、キリストを預言者としてあつかい、ムハンマド(虫は古いのかついマホメットと呼びたくなる)を最終的な預言者としているから、子どもみたいなものか。ムハンマドがイスラム教を始める前に彼のクリスチャンの友人の話をじっくり聞いたということで、コーランに書かれていることは、ムハンマドの教えの他は、聖書に書かれていることとそっくりなようである。イスラム教徒の人とダビデ王の話で盛り上がったときは(これは聖書に出ていて、虫はキリスト教系の学校にいっていたので)地球は小さいなぁと思った。
もっとも、カーリール・ジブラーンは、マロン派と意見が合わなかったらしく、破門され、国外追放された。そののちに、アメリカに移住し、アラビア語の新聞の編集長などをしている。「預言者」は英語で書かれている。
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さて本題、今回は男女関係についてである。
男女関係は、親子関係以上に「私物化」が生じやすいように思える。(同性愛の方についても同様である)つまり、いつのまにかなれあいの関係になり、ワタクシのモノと無意識のうちに考えてしまう。
アクセサリーのように、身を飾るモノとか。(きれいな女の子をはべらせるというヤツが典型)
給料を運んでくれるモノとか。
あれしろこれしろと言えばやってくれるロボットみたいなモノとか。
男女の関係はその「モノ」の商取引場(合コンとかお見合いとか)という感じがする。だとすると、「買い替え」中古の奥さんを下取りに出して、新しい愛人に変えるといったことも当然になってしまうのではなかろうか。結婚したときの取引が(例えば)美貌とお金であるとすれば、後者は、抽象的な価値であるだけに、美貌より長持ちするからである。
そういった考えを前提とすれば。
だからこそ、収入、社会的地位、外見でランク付けをし、「市場価値」を上げるために、ダイエットをしたり、いい仕事についたり金儲けをしたりするのだろう。
しかし、ヒトはモノではない。仮にそういった「市場価値」に恵まれていたとしても、「彼女(彼)はわたし自身よりお金や社会的地位(や美貌やスタイル)が好きなのではないか」という疑念がつきまとうのではなかろうか。
だから、そういう考え方には反対である。男女関係も他の全ての人間関係と同じく、相互に人間としての尊敬の念が必要だと考える。モノとして考える文化(略奪婚とか)に囲まれているからなおさら注意が必要である。
「あなたを人間をして認めています、尊敬していますよ」という気持ちが人間関係の土台として必要ではなかろうか。
そして、どんなに月日がたったとしても、相手の存在を当たり前と思わずに、尊敬し、嬉しく思い、何かしてくれたら感謝することを忘れずにいたいものだ。
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結婚について
(一部省略)
あなたがたは共に生まれ、永久(とわ)に共にある。
死の白い翼が二人の日々を散らすときも
その時もなお共にある。
そう、神の沈黙の記憶の中で共にあるのだ。
でも共にありながら、互いに隙間をおき、
二人の間に天の風を踊らせておきなさい。
愛し合いなさい。
しかし愛をもって縛る絆とせず、
ふたりの魂の岸辺の間に揺れ動く海としなさい。杯を満たしあいなさい。
しかし、一つの杯から飲まないように。ともに歌い踊りよろこびなさい。
しかしそれぞれひとりであるように。
リュートの弦が同じ音楽でふるえても
それぞれ別のものであるにも似て。自分の心を(相手に)与えなさい。
しかし互いにそれを自分のものにしてはいけない。
なぜなら心をつつみこめるのは生命の手だけだから。
互いにあまり近くに立たないように。
なぜなら寺院の柱は離れて立っており
樫(かし)や糸杉は互いの影にあっては育たないから。