最強のチーム、鹿島アントラーズの創造主〜「ジーコ自伝 『神様』と呼ばれて」を読みました。
○ 今年のJリーグは、鹿島アントラーズの優勝で終わった。やった〜〜!イェーイ!・・・あ、失礼。
この鹿島アントラーズを創ったのは、ジーコであり、監督から離れた今もジーコのチームである。(今は相談役とか何とかいう肩書きである)
実をいうと、虫はココをヒイキにしている。
もちろん良い選手がそろっている。。頼れるキャプテンの小笠原、マルキーニョス、内田、コオロギ(漢字書けねぇ、読み方違うかも)、新井場、青木、田代とか。
しかし、アントラーズで一番自慢に思うのは、(虫以外の)サポーターである。
こんなことがあった。鹿島スタジアムで試合を観ていると、ちょっと離れたところで缶ビールを飲みながら観ていたオヤジが、ヤジを飛ばしたのだ。
「横パスなんか出すんじゃねぇ。縦パスだせぃ!」
「ちゃんと、ゴールを狙うんだよ」
「ちゃんとサッカーみせろよ!」
思わず、ジーンとしてしまった。
そう、鹿島のファンは、ただ鹿島に勝ってもらいたいだけではない。いいサッカーをして欲しいのだ。勝ってるからって、味方同士でパスのやりとりをするサッカーのフリなんて見たくない。正々堂々と勝負し、しかるのちに勝ってほしいのだ。それほど、鹿島を愛しているのだ。こういうサポーターが、よいチームを育てるのだと思う。
他のチームの試合も新聞屋にチケットもらって見た事もあるが、こういう雰囲気のあるチームは鹿島だけだと思う。他は、勝てばなんでもあり・・という感じだった。 ジーコはサポーターを大切にしたし、そうすることを選手たちに教えた。この12人目の選手も実はジーコが育てたのではなかろうか。
○ さて、サッカー選手に必要かつ重要なこと・・・それは考えることである。スタジアムの状態や天気などのコンディション、相手チームの選手、監督を見て、自分のチームの選手を使い、発想力あふれる創造性豊かなプレイをいかに実現させるかを考える。
特に、目で追うことなしに、自分のチームの選手がどこにいるかわかっていると、そっぽを向きながらパスができるので有利である。動体視力や広い視野、物音を聞いて位置を把握できる能力が要求される。
そして、試合中は立ち止まらないこと!考えながら走るサッカーは、オシムジャパンが発明したかのように言われているが、とんでもない。ジーコが最初にやはりサッカーのプロの選手であるお兄さんに教わったことである。
ただ、ジーコの教え子がどちらかといえば、「考える」ほうに力を入れているのに対し(小笠原をみよ!)オシムの教え子のジェフの選手たちはやたらめったら走り回り、「走る」ほうに力を入れているように見える。
これは、両方、必要である。
ただ、「考える」ことは試合を経験すると、経験に基づくデータが頭の中で蓄積されるから、よりよく考えることができる。走るほうは体力がつくぐらいである。
○ それでは良いサッカーチームをつくるためにはどんなことが重要か。2つある。
一つは選手の能力を最大限に引き出し、そのチームのプレースタイルを確立すること。個々の選手の能力を最大限に引き出すとは、現に現れている部分だけではなく、潜在的能力も含む。
もう一つは、チーム作りには時間をかけるということである。スター選手をひっぱってくれば、一時的に活性化するかもしれないが、受け入れる態勢がなければその選手の能力をつぶす危険がある。
選手がお互いのプレーを理解し、信頼関係を築くのに時間が必要ということである。選手がお互いを人間として尊重することが重要である。
この点、鹿島は成功している。ユースからじっくり育てた選手が多いし、高いお金を払ってスター選手をひっぱったりしていない。申し訳ないが、この点が浦和レッズが沈んだ原因だろうと思う。あわててはいけない!
サッカーに限らず、チームで何かするときには使えるかもしれない。
○ この自伝を読んではじめて、アントラーズについてわかったことがある。
なぜ、「点をとる」攻撃的なサッカーをしているのか。
⇒ジーコが選手として長く在籍したフラメンゴがそうだったから。もちろん、ブラジルサッカー自体もそうだ。
なぜ、ラフプレーを受けてもやりかえさないのか。
⇒アントラーズは絶対にしないとは言わないが、ラフプレーが少ないと思う。ジーコのお父さんがラフプレーが嫌いだったのを受け継ぎ、ジーコも選手時代からしていない。それにやりかえさない。国際試合で、敵地チリのコブレロアに「サッカーを利用した集団リンチ」を受けながら、中立国で開催されたコブレロアとの試合でやりかえさなかった(もっとも監督がカッとなってラフプレーを指示したりしたが、ま、それはのぞき)のは、本当にすばらしい。
また、アントラーズの選手は、どう見ても、敵の味方じゃないの?この審判という感じの誤審に対しても、口論をふっかけたりせず、肩をすくめて(しょうがないな・・と思ってる様子で)、試合に専念している。
これも、ジーコの精神を受け継いでいるからなんだ!
○ アマチュアの名サッカープレーヤーにして、仕立て屋の仕事を誇りをもってしていたジーコのお父さんの言葉を紹介する。自伝のなかで最も心に残った一節である。
「他人が自分をどう評価しているかを気にしながら仕事をしてはいけない。自分がどれだけ納得いく仕事をしているかが大切なんだ。納得できるまで仕事をすれば、自然に自分にも仕事にも誇りを持てるようになるものだ。」
○ アルゼンチンのロッシにパスしたときのことが書いてあった。もちろん、ブラジル代表の試合でロッシは敵である。
普通の、ジーコ以外の選手なら、ミスキックであろう。
しかし、ジーコは以前ロッシと試合経験があり、ロッシの性格を読んでいた。ジーコの読み通り、あわてたロッシはディフェンダーと接触して、自殺点を入れた。
これは、スタジアムや自分のチームのことのみならず、敵チームの個々の選手の心理まで把握しているジーコだからこそできるプレーである!さすがは神様。
Spirit of Zico!
我ら、ジーコの魂を受け継ぐものなり。 アーメン。