アヴォンリーに帰る〜「アンの青春」を読みました。

                  モンゴメリ    中村佐喜子訳   角川書店

 赤毛のアンの最後で、奨学金を得たにもかかわらず大学進学を一旦あきらめてアヴォンリーの学校の先生になったアン。これはその教師生活とアヴォンリー村のあれこれとからませて書いたものである。

 社会人になったせいか、アヴォンリーの改善という社会運動を行っていて、赤毛のアン以上に村の噂話が楽しい。なにしろ、アヴォンリーには偏屈な方がそろっているのだ。きれい好きなあまり、人が訪問すると、入り口からずっと新聞紙をせっせと敷いてその上を歩かせる奥さんとか(向こうは土足だからねぇ・・・)隣に越してきた口汚いオウムを飼っているハリソンさんなんかも変わりものである。食事を決まった時間にとらないとか、食器を洗うのは雨の日の日曜だけとか。

 孤児院に行くまでに3組の双子を世話してきたアンだが、マリラを説得して、遠縁の双子の子供ディヴィとドラを引き取る。ディヴィがドラを隣の家の納屋に閉じ込めたり、教会で女の子のエリに毛虫を入れたり、まさにいたずらざかり。これは見張ってるだけで大変である。

 この双子や学校の生徒たちの愉快な間違い集がおまけでついてくる。子供の間違いというのは愉快なものである。天国が誰かの家の屋根裏にあるという神学的なあやまちも楽しい。もちろん、大人が上を指差したのを、あ、天井の上だからその家の屋根裏かぁと思ったのだ。

 アンと同じように想像力の豊かなポール・アーヴィングの父親(やもめ)と迷い込んで発見したやまびこ荘のミス・ラヴェンダーの遅咲きのロマンスもいい。ミス・ラヴェンダーとシャーロッタ4世(大きいリボンをつけたメイド)の生活が楽しそうなのでつい応援したくなる。身体にできるだけ「悪い」ものを食べたり(しかも何が悪いかわすれないために切り抜きしたりして)特に予定はなくてもお茶の準備を本格的にしたり、まさに大人のおままごとである。ミス・ラヴェンダーとポールのお父さんは昔つき合っていたのだが、ケンカ別れをしてプライドが許さず、そのまま25年もたってしまったのだ。モンゴメリにはこのパターンが多い。ま、ちゃんとくっついたのでよかったよかった。