ジェイムズ・サリス「ドライヴ」を読みました。

       鈴木恵訳  早川書房

 おしゃれなクライム・ノヴェル。

 映画「トランスポーター」を思い出す。主人公の職業・・・運転手(犯罪の逃走も)が共通していること。また、強盗などで運転手を勤めるときは、内容に興味なく、ただ運ぶだけと言い切るあたりが似ている。こちらの表の職業も、スタント・レーサーだが。

 しょっぱなから、死体が3個。この最初の場面は何度も出てきてその謎(なんで死んだのか、主人公はどうなるのか)を解くために最後までよまざるをえない。

 書き方がおしゃれ。主人公は同じアパートのアイリーンと彼女の息子ベニシオに出会う。

「仕事は?」
「州の公務員に仕事を提供するボランティアね。ここのところは」

 彼女の夫について。刑務所にいらっしゃるということである。

 その夫は次の月に出所して、以前の仕事・・・「強盗」に復帰する。ドライヴァーも運転手役を務める。

 もっとも、強盗に失敗して、殺されてしまう。

 アイリーンもしばらくしてから、やはり、殺される。

 主人公は、ヤクザなみなさんをきれいにかたづける。それが、3コの死体である。

 主人公はずっと「ドライヴァー」で名前は一切なし。一度名前を聞かれるが、
「教えたくないね。長いこと大事にしてたんで」といなしてしまう。

 ダークな物語・・・詩に近い。あまりにも簡素なため、何度も読んで、やっと意味が分かる。読み飛ばしてしまったおしゃれなところもいっぱいあるにちがいない。