「人格の成熟」を読みました。

A・ストー(著) 山口泰司(訳) 岩波書店 同時代ライブラリー

人格の尊重。
かつて、虫には、育児書を読みあさってた時期があった。
といっても子育てをしていた訳ではなく、どちらかといえば、まだ、育てられていた、中学や高校の頃である。(母親がいっぱい買ってたのを読んだのだ)
その時期の最終的結論は、子育てや教育で大切なのは、子供を一つの人格として尊重する事が大事だということだった。
虫としては、子供を一つの人間として、自分も一人の人間として、お互いに向き合うことを考えていた。
この結論に達して、育児書を読むのを止めた。
考えてみると大人同士でも、人格の尊重は重要である。
そこで、個人の尊重に重きをおく、別の分野に関心が移ってきた。
もっとも、大前提として人格とは何かという疑問は、当然生じる。
その点の疑問を解消するためにこの本を読んでみたのである。
分析的精神療法をわかりやすく解説した本といえる。
人格は・・・、いわば自分らしさである。
人は誰でも、その有する能力を開花させ、その人らしく、生きる権利がある。
精神分析医は、その人が自分自身になる事、自分らしく生きる事を手伝うのが、仕事なのだ。
いわゆる精神病、分裂病にかかると、人はその人らしさを失い、似通うそうである。
虫も、重度の精神障害のある方と交流を持つ機会があったが、確かに、その病気の故か、反応が同じなのである。皆、独特の、はりついたような無表情なのである。
個性の喪失が、この病気の重要な点なのだそうである。
自分らしく生きるというのは、成功のコツとして聞いてはいたが、精神衛生上もこれほど重要とは!
人の人格を尊重するために大切なのは、自分自身も自分らしく生きている事。いわば、自分自身の人格を尊重する事である。
自分らしく、自分自身の人生を歩く人は、人が個性を持って、その人自身の人生を行く事を認める事ができる。
これが成熟しているという事である。
一説では単に、恋愛できれば成熟しているとの説もある。(要は、ヤレればという事である)
しかしながら、それは肉体的成熟の基準となりえても、精神的成熟の基準とはなりえない。
やはり、パートナーシップ、相互に相手の人格を尊重して、違いを認めつつ人間関係を持てる事が基準であろう。
これに対して、未成熟な人間は、相手に親との関係を持ち込む。
甘えたり、利用したりするのだ。(性的、経済的に)
また、自我が未分離であるから、自分と違う部分を許容できない。相手の個性や人格を尊重できない。
学校や社会で、多数派と異なる人を排斥したりいじめたりする社会は、かなり未成熟といえよう。
そんなところで、理念だけ、「個人の尊重」を言うのが問題ともいえるが・・・。
ま、社会がどうの言う前に、自分から、自分らしく生きるしかないか。
そして、自己実現を目指す!
この本での定義によると、「個人の諸々の生具的潜在能力をこの世で可能な限り完全に実現すること」である。
なお、この本の同性愛の書かれかたは、おかしい。異性愛への過程としたら、30才以上の同性愛者はいないはずである。おすぎとピーコとか・・、古い本なのかな。