「100歳まで元気に生きる! 科学的に証明された長寿の秘訣」を読みました。

            ジョン・ロビンズ(著) 高橋則明(訳)   アスペクト

 ロシア・カフカス地方アブハズ、エクアドルのヴィルカバンバ、パキスタンの北端にあるフンザ、そして、日本の沖縄という長寿者が多いところの要因を分析し、長寿の秘訣をさぐって、日頃の生活に応用しよう!という本。

 単に長生きということなら、日本の平均寿命もそうとう長い。しかし、一般にイメージされているように、病院に通い(入退院を繰り返し)、年寄りを赤ちゃん扱いする老人ホームに「捨て」られて日々を過ごすのなら長生きしたって楽しいはずもない。最後まで元気に、活動的に、生きるにはどうしたらいいかを探る本である。

 長生きの秘訣としては、食べ物、運動、人間関係にわけられる。<食べ物・・・菜食>
 どの地域の人々も、主として食べているのは、玄米などの精製されていない穀物と豆類、新鮮な野菜と果物である。肉も食べるが、その割合はごくわずかであり、お祝いの時とかのみである。カロリーも低く、成人男性で1600kcalぐらいである。これも、ただ低ければいいというものではなく、野菜や植物性たんぱく質で栄養がとれていることがのぞましい。
 できるだけ、動物性の食品をとらないようにすることが重要である。<運動・・・激しく!>

50歳以降は激しい運動をしないほうが良いというのが、今までの定説であった。しかし、一週間のカロリー消費量が多ければ多いほど、長生きをするというデータがある。
 アブハズ、ヴィルカバンバ、フンザ、沖縄の長寿者たちの日常生活には、激しい運動が組み込まれている。例えば、富士山の頂上のような高度の地点で、隣村まで何キロも歩くことは相当ハードである。
 

また、(出来るかぎりでの)菜食と運動は、同時に行うのがのぞましい。運動だけだと、血管の流れが詰まるので心臓系の病気になり易い。菜食のみだと、欝っぽくなりやすい気がする。<人間関係・・豊かに!>
 個人的に、質の高い人間関係を維持することは、長生きに重要である。
 親子関係が良いと、その後も長生きできる可能性が高い。しかし、親は選べないから、これはどうしようもない。自分でつくる、パートナーや子供との関係を良くしていくしかない。
 アメリカのレポートで、成人男性について、喫煙者と非喫煙者、既婚か未婚か、死別か離婚かに分けて、年間早期死亡率の表があった。『喫煙は身体に悪い』とかなんとか印刷するようになったきっかけの「ハモンド・レポート」からの引用である。
 もちろん、喫煙者は全体的に高い数字であったが、既婚者以外の数字は非喫煙者であっても高めであり、(喫煙者はもっと高い)特に離婚者の数字が高くて、既婚者の喫煙者と同じくらいであった。
 そうしてみると、特に男性にとって長生きに重要なのは、タバコを吸わないことと結婚を成功させることのようである。
 高齢者の多く住むこれらの地域の人々は、家族愛や友情にとても厚い。高齢者同士が、いつ果てるともない冗談を言い合っているところなど、うらやましいかぎりである。

 また、社会的にも、アブハズ、ヴィルカバンバ、フンザ、沖縄では、原始的共同体として、お互いに助け合う習慣が根付いている。お年寄りは大切にされ、女性差別もなく、子供は皆とても可愛がられる。
 特に、年取ることに重要な価値を社会が見出しており、年寄りを敬う風習が根付いている。
 沖縄出身の友人から虫が個人的に聞いた話だが、沖縄では、お年寄りが荷物を持って歩いていると、(全く知らない人でも)若者がその荷物を持ってあげるのが当然なのだそうである。だから東京でも、荷物を持ってあげたくなるので困るとこぼしていた。
 しかし、それはすばらしい風習であるから、できれば、日本中で根付かせたいと虫は思う。
 他の地域でも、年寄りは社会の宝である。彼らは尊ばれる。(それで、日本やアメリカとは逆に年齢を多めにさばを読んだりする。ある年寄りは、このために彼の母親より先に生まれたことになった。)
 年寄りがいないことは、その家族の不幸なのである。

 日本では、テレビを中心に、高齢者差別が蔓延しており、嘆かわしい。社会は、テレビや教育、本や雑誌などを通じて、無意識のうちに「若くて、男性で、都会にいるのが望ましい」というメッセージを共有させる。
 それこそ、差別の悪いところであり、そういうメッセージに気づいたら、断固拒否すべきである。特に、歳は誰でも取るんだしね。差別っていうか、人をステレオタイプで見ること自体が、発想の貧困をものがたると思うんだが・・・。