「暗い森」をもう一度読みました。

               アーロン・エルキンズ 青木久恵訳 
              ミステリアス・プレス 早川文庫


 ギデオン・オリヴァー・シリーズ第1作。
 日本では賞をとった別の作品が先に訳されたが、この「暗い森」がシリーズ第一作なので、これから読むのがベストである。
 
 愛妻ジュリーとの馴れ初めが初々しい。長いシリーズにわたっていつもラブラブな二人であるが、オリヴァー博士ときたらはじめっからメロメロである。都会人オリヴァー博士が安っぽいテントとイワシの缶詰とパンなどの手薄な準備で熱帯雨林の中をさんざん歩き回り、しかも道にまよって泣きそうになっているところをレンジャーのジュリーに救われる・・・。ジュリーってば、男らしい!!
 
 恩師エイブが健在であり、二人の掛け合いが面白い。

「ねえ」とギデオンが言った。「どうしてユダヤ人は質問に質問で答えるんですか。」
「いかんか」

 二人して、「カリフォルニア大学のビッグフットの第一人者」に会いにいく。エイブってば、実に好奇心旺盛である。ビッグフットとはヒマラヤの雪男のことらしい。ま、UFOと似たような感じのものである。
 もちろん、ただのエセ科学者であり、カリフォルニア大学の管理部門にお勤めの方にすぎないけど。「教授とは言ってません。」いや、あんた言ってなくてもねぇ。

 狼少女みたいに、近代文明に触れず、隠れ住む部族との遭遇もすばらしい。しかし、現代アメリカ社会の素晴らしさを伝えるグッズとして、押すと音がでるカメのおもちゃ って・・・、素晴らしさを伝えてるか?結局、使い捨てライターが一番のお土産品とオリヴァー博士は考えたのだが・・・。
 ・・・まあ、考えて見ると、石器時代そのままの生活を送っている人達に何をあげればいいだろうか。虫なら、何をあげるかな・・・?意外にペットボトルとかが飲み水を貯めておくのにいいのではないか。密封できるし。塩!これは貴重だし、ごはんがおいしくなる。この人達は雨の多い熱帯雨林に住んでいるので、傘とかがいいかもしれない。オリヴァー博士の他の選択:ビーズの首飾りなんて、アメリカに来た入植者と同じことをしている!

 すこしネタバレになるかもしれないが、〈ビッグ・チーズ〉との出会いも忘れがたい。いわば、コントロールされた、未開生活といえる。(この意味は読めばわかります!)