「セレンディップの3人の王子」を読みました。

  エリザベス・ジャミソン・ホッジズ著 真由子・V・ブレシニャック、中野泰子、中野武重訳
    パトリシア・デモリ 画  バベル・プレス

 セレンディップ“Serendip”はセイロン(スリランカ)の美しい島の別称。
 “Serendip”から、“serendipty”という言葉が生まれた。これは、「捜しても見つからない、価値ある楽しいものをみつける能力」と辞書によって定義されている。

 3人の王子を試すため、ジャイヤ王(セレンディップの王様)が、王子達に、王位を譲るふりをするところがある。王子たちは、いずれも賢く、その意図を見抜き、王位を辞退する。賢さは謙譲の徳に繋がるといえよう。特に末息子、ラジャーシンハ王子の「若い身の上で、そんな権力をもつのは賢明ではない。」という考えは素晴らしいと虫は思う。自らの能力も相手の真の意図も知らず、嬉々として王位(内閣総理大臣の椅子)を受け取る、どこぞの政治家にみならって欲しいものである。

 ジャイヤ王は、王子たちのこの反応にいたくお喜びになり、王子たちが、慎み深く賢明であることを喜んだとあり、これまた、王の賢明さをものがたる。

 3人の王子は、王国を困らせているドラゴンに効く魔法を求めて旅に出る。この魔法は、英語でいうformulaであり、化学的処方や公式、信条という意味もある。

 その過程で、恋をしたり、怪物退治をしたり、その魔法をしっていると思われる預言者にそこここであったりする。RPGにぴったりかもしれない。

 《盗まれたラクダ》の話はホームズのようだ。もっとも、一本足で片目で歯の一本欠けたラクダの存在を考えるだけで笑える。

 ペルシャのヴァーラム皇帝への陰謀の話も観察力の鋭さをうかがわせる。

 さらに、インドにおいても勇気と知恵を示して、怪物を退治し、末の王子はパルヴァティ女王を得た。

 ペルシャに戻って、三つの頭のヘビを退治するあたり・・・日本にもそんなような話があったような気がする。

 もっとも、魔法(というか詩)自体はちょっとしか見つからず、当初の目的を達成できないので、旅は失敗かと思われた。
 しかし、「弱い者のために流した涙」によって、無事ドラゴンを倒すことができたのである。予想とは異なるが、実質成功といえる。
  3人の王子はそれぞれ、愛する妻を得て、幸せに暮らしましたとさ!めでたし、めでたし!