「遺骨」をもう一度読みました。

   アーロン・エルキンズ  青木久恵訳 早川書房 ミステリアス・プレス文庫

 ギデオン・オリヴァーシリーズ。今度の舞台はニュー・メキシコ州。妻・ジュリーやジョン・ロウFBI特別捜査官といったレギュラー陣とともに、司法人類学会(死体泥棒たちのどんちゃんさわぎ)に出席した<スケルトン探偵>オリヴァー博士。警察に協力して、科学的見地から、捜査する立場のはずの司法人類学者たちも、やはり人間であり、狭い学界を愛憎(どちらかといえば、憎しみが)渦巻いている。
 前会長で大立者・不慮の死をとげたジャスパー博士の遺骨の盗難事件に端を発し、別の骨の発見(しかも殺害されたもので、「ギャロット」*1 
という恐ろしい殺され方)、「遺骨」がじつは、ジャスパー博士でないことの発見、FBI捜査官の遺骨の発見、更なる殺人事件とアップテンポに話は続く。
  もっともこのシリーズを読みつけると、「これはAさんの骨だよ」と提示されても、(・・・ほんとに?)と真に受けない癖がついてしまったような気がする。話の後半で(前半のこともある)、別の人の骨であることをオリヴァー博士が発見することが多いからだ。
 今回は司法人類学者(腐乱死体とか、死亡推定時刻を言う方々である)の仲間うちであり、友人たちが容疑者になるため、オリヴァー博士はつらい立場だ。
 今回の殺人の遠因になっているのが大学院のちょっと不合理な制度である。これは日本も同じではないかと思うけど、ついた大学教授によって、その助手の出世度・博士号をとれるかなどが決定する。教授がイジワルだと、悲惨なことになるので、別の大学院とかに行くしかない。こうしてみると、大学までは、一応公平だけど、それ以上は運なんだね。高学歴も大変である。
 ま、いつもの(!)殺人はともかく、馬で遠乗りに行ったり、BBQしたりと、けっこう楽しんでいるギデオン・オリヴァーなのであった。

*1:ギャロットはスペインの異端審問に使われたモノでヒモを首の周りに2回巻きつけ、棒ないし固い物体を輪の間にさしこむ。棒を回すと止血器と同じでヒモはねじれて激しく圧迫する。まず、気管がつぶれ、さらに2.3回回すと背柱が折れる。つまり、喉をしめるのと、縛り首の両方。