「ママは眠りを殺す」を久しぶりに読みました。

       ジェームズ・ヤッフェ著 神納照子訳  創元推理文庫
             ※ネタバレはありません。
 

  ママ・シリーズ第三弾。デイヴは公選弁護人事務所の捜査官。犯罪で起訴された人の側からの捜査をしている。妻に先立たれて、ド田舎のメサグランデというところで働いている元NYの殺人課刑事。今回は、新人助手のロジャーも一人称の記述に加わる。
 メサグランデがどれくらい田舎かといえば・・・
 『実をいえば、わたしは未だに当地の山並みには微かな疑惑を抱いている。この山々が、本当はボール紙とキャンパスでできているのではないかと、そんな風に思うことがある。商業会議所が旅行者を喜ばせるために、毎朝日の出前に配置し、日没後にまた舞台裏にしまいこんでいるのではないか。』
  ハリウッドからきた別の人物も、中西部のセット(エキストラつき)ではないかと言っているし、空気が新鮮すぎるとこぼしている。(デイヴも同調する。)
  そんなド田舎で文化に飢えているインテリの集まり、素人劇団で《マクベス》を演じるのが今回の舞台である。
  素人劇団ではあるが、劇場では《マクベス》と言わない(もし言ったら3回十字を切る)、などの役者の迷信を共有している(というか、真似ている。)
  デイヴのママは、「ユダヤ人のママ」というステレオタイプから出発しているが、実に魅力的である。是非とも、ママのユダヤ料理を食べてみたい。本当においしそうだ。社交的かつ精力的に生活している。もちろん、ママが探偵役である。
  劇団のメンバーもそれぞれ個性的である。サリーと元夫のバーニーが忘れがたい。犯人当ての前に他の役者それぞれの嘘を暴くのが、楽しかった。なぜって、役者は嘘をつくのがならいだから。ま、虚栄心のかたまりといったところである。
 題名は、マクベス夫人(言わずとしれた元祖殺人犯である)が不眠症を訴えたことに由来するようだ。