「古代への情熱ーシュリーマン自伝ー」をもう一度読みました。

シュリーマン・関 楠生 訳  新潮文庫

  虫の座右の書。

  今までは、諸外国語を学ぶ時の方法、富の築きかたといった、ハウツー本として読んでいたような気がする。もう一度通して読んでみると、たった一つの夢、ただ一つの情熱を見事に開花させた人物だと感じた。
『私の後半生の活動は全て、ほんの子どもだったころに受けたいくつかの感銘によって規定されたのだということ、いやそれどころか、それらの感銘から生ずる必然的な結果だったのだということをはっきりさせたいからにほかならない』
 つまり、?トロイアを発掘し、?愛するミンナに値する男であることを示そうという情熱である。
 そしてそれは実現した。?トロイアは実際にあることを示し、?よき理解者であるギリシャ人の妻を得た。
 もっとも、それはある意味実現しなかった。?目指すトロイアは掘りすぎて通りてしまったし、?ミンナは別の人と結婚してしまった。
 つまり、男が夢を抱き、一生をかけて実現させようとした場合、それは必然的に実現するということをこの話はしめしていると思う。
  しかし、それは思いもよらない形で実現する。?発掘によってトロイアがあったということは、世に知れ渡ったし、考古学者たちもトロイアは存在しないという考えを改めた。?ミンナではないが、愛する女性が現れた。
  全体を通して、シュリーマンが、自らの運命を信じつづけたことが心を打つ。再読して、神秘的な色調に気づいた。
  とりわけ、難破して砂洲の上で、《運命の声》を聞くところに感銘を受けた。
  虫も最近、声を聞くわけではないけど、夢でみたことがそっくりそのまま現実に現れる。夢でみた戸棚とか、ポスターとか。そんなことがしょっちゅうだとなんか消耗するんだよね。そろそろ何か運命の潮目が来たのかな。