食べることを楽しむ〜「フランス女性は太らない 好きなものを食べ、人生を楽しむ秘訣」を読みました。
ミレイユ・ジュリアーノ 羽田詩津子 訳 日本経済新聞社
世にダイエットの本はゴマンとある。
しかし、カロリー計算や運動より、「暮らし方」に重点をおいた本は少ない。これは、数少ないそういう本の一冊である。
フランス女性が太らない・・・ってことはない。ただ、アメリカ人女性に比べると・・・ってことである。
この間、すべてマクドナルドで食事をしながら、ダイエットに成功した男性の記事を読んだ。
めったにないことである。
しかし、普通に考えるとやはり、ジャンクフードは太る源である。甘い物やお酒と並ぶ。
というか、食べ物に対する考え方を、もう一度考え直す必要があるのではないか?
日本でも、そう遠くない昔に、旬のものを、おいしく、「ごはん、味噌汁、おかずを何品か」といった献立を考えて食べていた。別に料亭と同じ物を食べる必要はないが、食べ物を彩りや匂いなどでも味わって食べるのは失いたくない習慣である。
フランス女性の「食べ方」は伝統的なフランスのそれである。旬のものをおいしく(きちんとしたお皿で、スープではじめて何品かを食べる)果物もたくさん食べる。
特筆すべきは、フランス料理は(特に伝統的なものは)、そんなに健康的ではないと言われているにもかかわらず、赤ワイン(ポリフェノール)など、実は身体にいいものも出てきたり、きちんと食べ、カロリーを気にしないことが、かえって健康的な生活に役立つのだ。
例を挙げよう。同じカロリーのドーナツと、ようかんがあったとする。
ドーナツはテレビを見ながら食べた。
ようかんは、きれいに盛り付け、ゆっくりとお茶と食べた。
今までの経験から考えてドーナツの方が太ると思う。
・・・なんというか、食べることを重視しない考え方は、アメリカなどから来ていると思う。(著者もアメリカにいる時に太った経験を語る)アメリカで、力があり、主流なのは、もともとのイギリスからの移民、つまりアングロサクソンの考え方だ。イギリス人にとっては食べ物は重要ではない。身体を保持するためのエサに過ぎない。だから、大英帝国をつくるため、アメリカやインドに長い航海をする間、粗末な食べ物で我慢できたのだ。
このアングロサクソン(をメインとする)の国イギリスとフランスには長い確執がある。しかし、食事については対照的な国であることは確かである。「イギリスには一つのソースの種類と数え切れない宗教(キリスト教のプロテスタントが多いが、これはいろいろ枝分かれしている)があり、フランスには一つの宗教(キリスト教のカトリック)と数え切れないソースの種類がある。」というのは昔からある言葉だ。
イギリス人は、それだけ、何やら宗教上の何とか論をこねるのが好きであり、フランス人は、料理に情熱を傾けるということであろう。
ケロッグなどのシリアルとか、いわゆる「機能性食品」という言葉は、「エサ」系の言葉だなと思う。食べるけどね。あと「〜は身体にいい」とか。
カロリーばかり計算しているのもちょっと違う。
食べることを官能的な楽しみとすることは、日本の家庭でだって、行われていたと思う。
色合いを考えて、煮物を具で分けて盛り合わせたり、刺身のツマも、昔の料理の本を見ると、今のような大根のみ(とプラスチックのタンポポ!)ではなく、生で食べられる野菜はいろいろつけあわせていたようである。
食べることをたのしむというのは、食べ物を、かきこむのではなく、五感をつかって食べるということ。
色、味、におい、口当たり、歯ざわりなども感じながら食べるということ。
この本が具体的にすすめているのは、太りすぎ調整には、スープをたっぷり取り、水をたくさん飲んだり、歩いたり・・・と普通にできることばかりである。
でも、パリの市場に新鮮な野菜や果物が並ぶところ、それをバラ売りしているところなんか、マネできない。
たとえば、桃一つ選ぶにも、「マダム、それはいつ食べるの?」「明日の夜よ」「じゃあ、これがそのころ熟します。」という会話ができるのである。
日本のスーパーは、バラ売りしないし、パックに入ってるとイヤでも買わされる。
あ〜、パリに住もうかな?