因果は廻る〜「追憶のファイル」を読みました。

           ジャネット・ドーソン / 押田由起 訳  創元推理文庫

 
 ジェリ・ハワードシリーズ。確かこれが一作目。

 再読だけど、昨日の夜中に一気に読んでしまった。海外推理小説中毒から抜けられない・・・。

 ジェリ・ハワードは、どちらかというと、地味な感じである。女性私立探偵で、師匠エロルの下で働いていたが、師匠が引退したため、独立。日常的にはあちこちの法律事務所から仕事をもらっているようで、この本の中でも、メインの依頼をこなしつつ、知り合いの弁護士に頼まれた仕事をしている。
 このシリーズは、けっこう、ジュリの恋愛の要素が大きいと思う。事件もからむけど、ちゃんといい男にめぐりあって、恋愛を楽しんでいる。この本でも、マーク・ウィリスへの人物評価が(殺人罪で服役して仮釈放中なのだが)恋愛関係に影響されていることは確か。でも、人物をきちんと見て、それが本当はやっていないという判断と恋愛につながったのだから、まあよしとしよう。
 前の夫のシド・ヴァーノンはどちらかといえば、狂言回しっぽい。この刑事から事件を回されるのだが。

 今回のメインの依頼は、妻の失踪である。
 依頼人の夫、フィリップ・フォスターが言うには、「買い物に行く」といって子供を義母に預け、そのまま帰ってこなかったのだという。
 調べ始めると、その奥さん、レネイ・ミルズは本名ではなかった。偽名のまま結婚し、子供までつくっているのだ。

 さらに深く調べると、レネイ・ミルズと名前を変えたのは、両親が殺されるという事件がおこったためであり、本名はエリザベス・ウィリス。兄マークが、両親を殺したとして有罪宣告を受けている。
 ジュリは、マークと高校が同じであり、(2年ぐらい後輩)一緒に演劇をしたことがあったのでこの事件は覚えていた。それで、大学教授をしている父親にエリザベスの在籍の記録を調べてもらい、ウィリスの名前が出てわかったのだ。

 ありふれた家出(かけおち?)が、過去の殺人事件とからむ。フィリップ・フォスターは、父親の圧力に負けて、依頼を撤回するが、それはレネイが子供を虐待していたらしいからという。過去の殺人事件もDV(ドメスティックバイオレンス家庭内暴力)がからんでいた。
 よく言われることだが、親に虐待を受けた子供は虐待をする親になりやすい。もちろん、これを反面教師として、いい親になるケースだってある。
 
 ウィリス家の個人的歴史を読んだような、重厚な読後感がいいと思う。

追記:去年8月の日記で3作目を紹介済だった!